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xxx(鳴海)side‥₂
「特に大事な用ってわけじゃないのよ」
小さく息をつくこいつの考えていることは
容易に想像がついた。
「ごめんね。あの子はまだ…変わらずよ…。
幸人には会わないってそればっかりで…」
「……そう」
何も演じていないときの幸人はそれなりに人間味があって、感情も読み取れるから嫌いじゃなかった。
「僕が悪いから………、それは仕方ないよ。
…ナルもいつもお見舞いありがと。」
「…ふふ。あんたたち本当双子ね」
「は?どういうこと?」
「同じこと言ってたわあの子も。…泣きそうな声して」
「だろうね。そういう性格だから。」
遠くの方を見て、懐かしそうに、少し寂しそうに
言葉を紡ぐ幸人に、あたしはどんな言葉をかけていいかわからなかった。
「…で、わざわざそんな話したくてここにいたの?
なら僕もう戻るよ。生徒ベッドで休ませてるし」
シュゥっと水の中に火が落ちる音がして、
幸人は早足でこの場を立ち去ろうとした。
「ねえ待ちなさいよ。幸人最近…、高木君と仲良い
みたいじゃない?」
外に出かかった身体をビクッと震わせ、
一瞬固まった幸人を見て思わず笑みが溢れた。
「まあ…、同じマンションだからね
他の人より関わる機会も多いし…?」
「ふぅん?…夏休み前なんて高木君の車で
一緒に通勤してたじゃない?よっぽど仲良くしてるのね」
「ん、な…それは…」
こみ上げる笑いを堪えるのに必死になりながら
幸人がこちらを見ていないのをいい事に、
あくまで冷静さを保ちつつ続けた。
「まさか腰でも痛めてたんじゃないでしょうね??」
高木君の車で来た日、ちょっとだけだけど
その部位を庇うような不自然な歩き方と
高木君の意地悪そうに笑う横顔が見えたから
まさか、とは思ったんだけど…。
「…っ悪い?す…好きだから、受け入れただけだしっ」
ちらっと振り返り鋭く睨む幸人は耳まで赤くして
分かりやすくて、可愛い子だなと思った
「ふふっ。冗談のつもりで言ったんだけど…
面白いこと聞いちゃったわっ…ふふふ」
「…まじでナル性格悪い…っ!
絶対誰にも言うなよ!バカナル!」
勢い良く扉を閉めて、保健室のある本館棟に早足で向かう
幸人を無言のまま眺める。
強気で、照れ屋で、わかりやすくて
数年の時を経て同じ人を好きになってしまうなんて
どこまでも似てるんだから。あんた達は。
やがて幸人の姿が見えなくなると、新しいタバコをもう一本取り出した。
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