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氏原side‥
その日の夜、残業を終えて帰ってきた康明の家に
空になったタッパーを取りに行った
もちろん、これが康明と一緒に過ごすための口実でしか
無いということは、お互い口に出さないだけでもう十分わかっていることだった。
ここには僕のお皿も、箸も、下着も、着替えも、たばこも
なんだって揃ってるんだから
わざわざ帰る必要もないし、帰れと咎める人間もいない
夏休みの間は、半同棲のような形で過ごした。
出会って間もない、あの歓迎会の日を皮切りに
僕達の関係は大きく変わった
「なぁ、ナル先生が幼馴染ってなんで言わなかったんだよ?」
トモナリ君の我儘に付き合わされている事、
この状態は既に担任や学年主任、校長は把握している事
くれぐれも、無理はしないようにと念押しされている事も
全部話した
あまり、康明に心配かけても悪いし…って
仕事のことはあまり康明には話さないようにしてたから。
生徒の相談事とか、秘密厳守の事だって実は結構あったりもするし。
でも、それが良くも悪くも康明を刺激して、康明が……
あの康明が、
まさかあんな風にトモナリ君やナルにヤキモチ妬いちゃうなんて
あの感情を隠しきれていない冷たい目線を思い出すと
身体の中心部がゾクリと疼いた。
「おい。聞いてんのか。」
「も、もちろん!えと……なんだっけ………?っぎゃ!
い、いたたたたいいっまってまってごめん、いてててっ」
やっぱり聞いてねーじゃんかよって
容赦なく何かの絞め技をかまされて、両手をバタバタさせて抵抗した。ベッドで始まる突然のプロレスごっこ
22と25の男がこんなに暴れて、いつか壊れてしまうんじゃないかと思うけど
まぁ、暴れる……といえば、あの行為も相当スプリングを
揺らしているからそう簡単には壊れないか…とか
勝手に変な事考えて顔を赤くするのは僕の悪い癖。
「で、ナル先生の事俺に言わなかったのはなんで?」
いつの間にか僕は康明に組み敷かれる体勢になっていて
思った以上に近い距離感に心臓は速さを増していく。
吐息がかかるほど近い距離で聞かれれば、目を離すことはできない
「ナ、ナル…は…その……。僕ってよりは妹と仲が良くて
今も定期的に会ってるみたいだけど…その…」
僕がどんなに口篭っても
この先に言う事がどんなに恥ずかしい事でも
康明は僕がちゃんと言うまで放してくれない。
「ナルと康明、仲良いから…僕がそれ言っちゃうと
絶対に康明はナルの昔の事とか聞いてくるじゃん…?
やだ、そんなの……。」
ナルにヤキモチやいてたのは、僕も同じだ
康明を見ると、少し驚いたような顔をしたあと
乾いた笑いをクスリと溢した。
「………聞かねえよ。」
ぼそっと呟いた康明は
嬉しくて、でもそれを押し殺して、眉間にシワまで寄せて難しい顔をしてるような感じで
なんなら少しだけ顔も赤くて、多分本人は気づかれないようにしてるんだろうけど最近の康明ほんと駄々漏れ
嬉しいから、気づかないふりをしてるけど
「…俺は、お前のことを知れたらそれでいい
……お前の事、教えろよ。…少しずつでいいから」
康明の視線が、ふと僕の目から逸れて
絡ませた左手のところでとまった。
そのまま、引き抜かれた手は僕の腕を隠す袖を掴み
徐々に、徐々に捲し上げていった
―あらわになる、深さも方向もバラバラの傷痕。
袖口から多少覗くその痕に、気付かないわけはないと
思っていたからあえて止めることはしなかった
けど、本人も肘の方までも広がっているとは思わなかったんだろう
少しだけ、顔を歪めていた
嫌われて、しまうのだろうか
汚い、怖い、キモい、グロい…どんな言葉が康明の口から発せられるんだろう
「……康明、ごめん。…きたないよね。」
自分でも驚くほどの弱々しい声が出た
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