アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
112
-
テストも無事終了し、校内は何処もかしこも体育祭の
話題で持ちきりだった。
昼休みには体育館やグラウンドで種目の練習をする生徒
体育の授業もそれぞれ種目別に別れて練習するみたいで
なんだかどこも忙しなかった。
そして何よりつまらないのが――…。
『もしもし、高木先生。お疲れさまです。氏原です。
1-3の生徒さんを熱中症の疑いで保健室で寝かせているんですが、少し来ていただけますか?』
「…あー、今行きます。」
これだ。
暦の上では秋の扱いになっていても
まだまだ暑いのがこの9月。
体育祭が近づくにつれて、熱中症や怪我をする生徒が
増えるのは当たり前の事で、なかなか学校で幸人と
2人きりになれない日が続いた。
あのクソガキも思っている事は同じなようで
たまに見かけるがそれはそれは面白くなさそうに、保健室の奥にある面談室を使って自習をしていた。
ザマァねぇなガキ←
まあ、俺自身つまらないと思いつつも、互いに名字で呼び合う敬語の関係性を少しだけ楽しんでいたりもする。
これがこの先ずっと続くのは勘弁してほしいものだが、
体育祭当日まであと一週間も無いくらいだ
それが終われば嫌というほど構いまくってやるんだと自分に言い聞かせて、教師としての仕事をまっとうするため
”養護教諭の氏原先生”のいる保健室へ向かった。
軽くノックすれば、はーいと透き通る声が返事をする。
幸人は俺の足音にいち早く気づくらしい。
確かにサンダルを床に滑らせて歩く独特の音はわかりやすいしな。
扉をあけてくれた幸人は珍しく、疲れた顔をしていた。
「なんて顔してんだよ。」
「あはは、こう毎日満員御礼だとね…」
「…あんまり無理すんなよ。」
幸人の額を軽く小突いて室内に入る。
入り口で誰にも聞こえない小さな声でしか話せないのも
体育祭が終わるまで。
耐える。耐えるぞ。耐え抜くぞ、高木。
備え付けのベッド2つはしっかりとカーテンが引いてあり、予備のベッドでは、俺のクラスの生徒が身体を休めていた。
擦り傷や捻挫で次々に生徒が押し寄せ、生徒の親御さんが迎えに来るまでの1時間弱で、一体何回転したんだってほどの繁盛ぶりだった。
…これは疲れるわな、幸人も。
それに加えて、あのクソガキまで居るときたら…。
今度家に来たとき、マッサージくらいはしてやらねえとな。
こんなに忙しいのにも関わらず、朝は早起きして変わらず毎日弁当を作って持ってきてくれる幸人に
俺ができるのはそれくらいしかない。
なんだか申し訳ねえな…。
てかそろそろ行かねえと。
生徒も帰ったし俺がここにいる理由はもうないんだった。
気分が落ちているのがバレないように、そっとソファから立ち上がると、ちょうど保健室が落ち着いたそのタイミングで
幸人は俺に触れるだけのキスをした。
一瞬、ほんとに一瞬の出来事。
「っな…」
「しーーー。ベッドにも面談室にも生徒が居るんだから」
「…おまっ……」
俺の口元に人差し指を突き立て、小声でそう囁いた。
いや、嬉しかった確かに嬉しかったけど、何で今なんだ。
目を見開いてフリーズしていると、幸人はクスリと笑って小声のまま続けた。
「だって康明の表情みてるとダダ漏れなんだもん。
だーいじょうぶ!あんまり心配しないでよ。」
こうしてたまに大人に見えるのは、なんだかんだ言っても
俺のほうが3つも年下だからだろう
だから子供の俺はその優しさに甘えてしまう
頭にポンと手が置かれ、それが”そろそろ行きな”の
意味を示すことはわかってる。
でも、最後に可愛くない子供の俺は抵抗するんだ。
「…っや…!!?」
かぷりと耳を軽く噛んだ。
漏れた声に慌てて口を抑えるけど、多分それ
もう遅いやつだわ
「やられっぱなしは性にあわねーんだよ。じゃあな。」
手を振って保健室をあとにする。
空いた扉の隙間からクソガキのえげつない視線を感じたけどそれを完璧にスルーして、俺は教室に戻った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
113 / 448