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「2人になるのも、なんだか久しぶりねぇ…」
深く吸い込んだ煙を吐き、ナル先生が口を開く。
この時間に、2人。
1年の担任がこぞってタバコ休憩だなんて
あまり他には見られたくない光景だろうに、
ナル先生はそんなことお構いなしとでも言うように
それはそれはめちゃくちゃ寛いでいた。
「明日ねぇ…。高木君のクラスはどう?頑張ってる?」
いつもの超絶ハイテンションのナル先生はとはちょっと違う、今日のこの人はなんだかいつもより大人びて見えた。
「まぁ…それなりに?」
「そう。それはいいわねぇ、皆んなキラキラしてるでしょ?」
「そっすね…すげー楽しみにしてますよ、あいつら。」
ナル先生の横顔は、生徒たちを愛する温かい教師の顔で
たまに見せるその姿は俺がナル先生を尊敬する中で1番大きな部分。
「いい思い出になるといいわね。生徒にとっても
…高木君にとっても!」
にっこりと笑って俺を見るナル先生は
またいつものお節介ハイに戻ったみたいで、俺の
手に持っていたタバコを取り上げた。
「んもーっ!こんなに重いの吸ってまだ若いのに!
身体に悪いじゃ………あら?」
唐突なお説教が始まったと思ったら、今度は急に黙り込んだナル先生。
やっぱりよくわかんないこの人は苦手だ
「これ…ずっとこれ吸ってる??」
「?はい…まぁ。」
するとニヤリと悪そうな笑みを浮かべたナル先生が
なるほどなるほど、そういう事ねって
ブツブツ何か呟いて笑いだした。
なんなんだ…
「ナル先生?どしたんスか」
「え?いやぁ…夏休み前に急に幸人がタバコを変えてね?
味に飽きたとか長持ちするだとか適当なこと言ってたけど
…銘柄まで高木君と同じものがいいなんて、女の子みたいで笑っちゃうわよね?」
…は?←
「え、なにそれどういう事どういう事」
興味津々に食いつく俺に、ナル先生は面白そうに笑った。
「あんた達ってばほんと、驚く程のバカップル…」
「いや、あの…ナル先生、俺ら付き合ってないっスよ。」
何をどう解釈したのか、はたまたどこまでを知っているのか俺にはわからないが、これだけは言えること…
いや、言わなければいけない事だと思った。
“恋人”では無い俺と幸人。
これが誤解されるのは非常にまずい。
男と男、教師と教師。
そして俺には未だ、過去のトラウマが邪魔をして
幸人を恋人として迎え入れられない狭い心がある。
幸人がたとえ俺と、そういう関係になりたいとどこかで思っていたとしても、だ。
「…幸人が否定してたのなんて、嘘だと思ってたわ…」
口を手で押さえて、大袈裟に驚いてみせるナル先生。
おい、付き合い長い奴の言葉をそんな真っ向から否定すんのかよ。可哀想すぎだろ幸人よ…。
「――高木君は幸人の事を好きじゃ無いの?」
真正面から、そんなストレートに聞かれるとは思ってもおらず、言葉を必死に探す俺にナル先生は続けた。
「幸人と出会ってからの高木君、自分で気付いてるかわからないけどすごく変わったわよ?
特にアイツの前だと優しく笑うようになって、雰囲気もずいぶん柔らかくなったわぁ。」
勿論、それは自覚済みだ。
自分でも驚いた程なんだから。
それくらい、幸人が愛しい。
笑ってほしいし、一緒に笑いたい。
幸人が居ればそれだけで、世界は明るくなる。
大好きなんだ。
それでもあと一歩を踏み出せないのは―――
「それとも高木くん…
――まだ引きずってるの?」
ナル先生が発した言葉に
俺の身体がビクリと震えた。
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