アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
124
-
氏原side‥
朝が来た。
そう思えるのは、康明の隣で寝る時だけで
康明が居なければ、僕は死んでいないだけの物体だ。
呼吸をして、食事をして、意識のあるままただ目を閉じて、そして朝が来る。
なのにどうしてだろう。
彼に出会ってから、彼の匂いが、温もりが、声が
僕を優しく包み込んでくれるその腕が
心地よい眠りに誘い込んでくれる。
フワフワしてきた意識の中に、康明のやけに甘い声が響き渡る。
心も、身体も完全に溺れきっている康明に包まれて、その言葉の意味を必死に探る。
「俺はお前だけのもんだから……。」
え…
………え、それって――。
思わぬセリフに心臓が動きを早める。
けれど、ズルい僕は狸寝入りで康明の重ねゆく言葉に耳を傾けた。
規則的な呼吸、脱力、重力に逆らわぬ瞼
大丈夫だ、僕は今
眠っていると信じて疑われることは無いだろう
「………………。」
「………………。」
「………………?」
でも、までと暮せど康明がその先を言う事はなかった。
それどころか、すー、すーと今にも眠りについてしまいそうな静かな呼吸も聞こえる。
…まったく。
可愛いんだから、もう。
普段は僕よりずっと大人で、苦いコーヒーばかり飲むような康明だけど
ふとした瞬間に、こうして年相応というか、やっぱり年下だよなぁと感じさせる瞬間がある。
そんな所も、大好き。全部。
康明が完全に眠りにつく直前
彼の頭の奥に響くよう、耳元で優しく、溢れる気持ちを言葉に変えた。
「好きだよ…。康明」
一瞬、ピクリと康明の目元が動く。
でも、整った呼吸はそのままで
暫くその姿を眺めていると、あぁ、眠っちゃったか
とため息が出る。
届いているだろうか、僕の気持ち
伝わっているだろうか
再び目を閉じ、康明が僕のために伸ばした腕に頭を乗せる
お互いの楽な体勢へと体を持っていき
温もりに包まれる
すればすぐに眠気が襲い来るわけで、康明の力には本当に驚くばかりだ。
伝えたい
気持ちを全部。
次こそは、康明の意識がしっかりしてる時。
きっと、彼なら優しく受け入れてくれる
いつものように、笑って僕の身体を抱き寄せてくれるんだ
康明の寝息を聞きながら、段々と意識が遠のく。
明日はお互い頑張ろうね、僕らの初めての体育祭
忘れられない1日に。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
125 / 448