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一服して戻れば、保健室から賑やかな声が漏れていた。
あんまり煩かったら注意してやろうと思ったけど…
ま、今はいいか。
扉の入り口に背を持たれて、中から聞こえる会話に耳を傾けた。
「ちょちょ、何で氏原ちゃん逆ギレ?!」
「…あー、まじ謝り損なんだけど。有り得ない。」
「は〜?あれでしょあれ、もちろん気付いてたし!
やっと謝ってくれたかって感じ〜?」
「んもーー何それ!ほんっと可愛くない生徒!!」
おいおい。
あんなにしおらしい顔して渡辺と二人にしろなんて
言ってきたくせにケンカか?
ってかそんなギャーギャー騒いでるから通りすがりの
生徒達もびっくりしてんじゃねーか。
全く。止めに入るか―…
でも、取っ手を回しかけたとき、その騒ぎ声は
いつの間にか笑い声に変わっていた。
……?
何なんだ、あいつら。よくわかんねー。
……まぁ、けど何か2人共楽しそうだな。
渡辺はいつも犬みたいにキャンキャン吠えてるけど
幸人まで一緒になって騒いでんのは見た事なかったかも。
そんなに仲良かったのかよ、こいつら。
思わず、ため息混じりの笑いが漏れる。
そのうち、話している内容は親友になりたいだとか
そんなクサい話に変わっていて
幸人の事を名前で呼び出すようになった日を思い出す。
そういえばアイツも俺に同じ事言ってたっけな。
名前で呼んで欲しい、とか
友達としてこれからも会いたい、とか
そんなもん、自然となって行くもんだと思うし
俺には何が良いのかよくわかんなかったけど
幸人と渡辺、何か似てんな。
ほら、保健室からもそんなような会話が聞こえる。
…よし、そろそろ良いだろ。
扉を開ければ、髪もぐしゃぐしゃジャージも寄れてて
渡辺に関しては化粧もぐちゃぐちゃで
そんな2人が揃ってこっちを向く。
「ゆきとちゃんは流石にやべー」
笑いながら言ってやると、幸人は時計にチラリと目をやって、いつから居たの?!て顔をした。
いつも俺の足音で気付くのに、そのぐしゃぐしゃの頭を見るに取っ組み合いでもしていて気付かなかったんだろう。
全くわかり易いやつ。
渡辺なんて何故か顔真っ赤にして固まってるし。
俺にはこっちのガキの考える事はよくわかんねーかな。
「…ってか腹減ったんだけど。」
そうだ。今日は幸人が弁当を作ってくれていたんだ。
いつものが弁当じゃないとかじゃないんだけど、
今朝言ってたんだ。”ちゃんとしたの”作ってきたって。
こいつの中のちゃんとした弁当ってどんな立派な物なんだろうと、実はこの半日、ずっと考えて楽しみにしていた。
でも、俺の発言に対しての返事をしたのは
幸人じゃなかった。
「あっ、あのさ、それなんだけど…
高木っち弁当ないなら、ウチの余分に…あるから…
た、食べる……?」
「へ?」
目の前に突き出されたのは、真新しい弁当箱。
ハートの付いたピンクのそれは何とも女子らしいものだと思った。
だけど今日は俺――…。
その時、スマホがポケットの中で震えたことに気付く。
同時に、幸人が渡辺から見えないように、自分のスマホを指でコツコツと叩いて見せてきた。
その通知が幸人からのものだと察した俺は
ポケットから取り出し、電源をつける。
『僕のは夜一緒に食べようか。
彼女、康明の為に早起きして作ったみたい。
食べてあげて?』
あー、そういう事。
余分っつってたけど、俺の為?
んー、やっぱよくわかんねーな。
「ありがと、渡辺。腹減ってたんだよ。」
一応礼をいうと、渡辺はボンっと音でも立つんじゃないかって勢いで顔真っ赤にして俯いた。
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