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「今日、暑かったし…腐ってないか心配だったからさ。
お弁当と同じようなメニューにしたけど。どうかな?」
そういわれてテーブルに並んだものを見ると、
さっきごみ箱に放り投げられていた卵焼きや唐揚げが
作りたての艶と湯気を帯びながらワンプレートにバランスよく盛り付けられていて、
揚げ物のサイドに添えられていたであろうリーフと
ミニトマトは、これまた幸人の手作りと思われる
フレンチドレッシングを被ってみずみずしく食卓に
花を添えていた。
「めっちゃくちゃうまそう………。」
幸人の顔をうかがうと、そんな俺の反応を見て本当に嬉しそうな顔をしているからつられて俺の顔も綻ぶ。
「どうぞ、召し上がれ。」
幸人が言い終えるが早いか、
俺の箸が唐揚げを挟むのが早いか
揚げたてのそれはジューシーでサクサクで
熱すぎないのは、俺が一番に頬ばることを知っている
幸人の気遣いなのか、たまたまなのかはわからないけれど。
会話も忘れて色んなおかずを口に運ぶ俺を見て呆れたように笑いながらも、幸人も自分の前に用意されたプレートの中からミニサイズのエビフライを摘まむと、目を輝かせながら「おいしい…。」と呟いた。
渡辺のくれた弁当も美味しかったけど
普段からこれに慣れちゃってる俺は余程舌が肥えてしまったようで比べるものでは無いと思いつつも、その差は歴然だった。
「やっぱ誰が作ったもんより幸人の飯が一番うまいな。」
そういうと、幸人は照れたように笑って、少し顔を赤くしながら俺の口の端についたご飯粒を取ってくれた。
「誰も取らないんだから。ゆっくり食べなよ、もう。」
テレビもつけずに食事を終え、空になった皿を幸人が流しに持っていく。
その後姿を眺めながら、だらりとソファーにもたれ掛りながら、ふと体育祭の時の幸人を思い出した。
確かに似ていた。
それはもう、血縁を疑うくらいには。
幸人は妹がいると何度か言っていたのを聞いたことがあるが、幸人も先輩も年は同じのはずだから、まさか兄妹なんて事は無いだろう。
ただ…似ているだけか……。
何となく気持ちが重く感じる理由は、もはや自分にすらわからない。
俺は、先輩の面影を
幸人の中から探しているだけなんだろうか…?
「康明?どうかした?」
洗い物を終えた幸人が俺の隣に腰掛ける。
その姿は、どこからどう見ても保健室で生徒の面倒を見たり、家で俺に溢れんばかりの笑顔を向けてくれる
”幸人”なわけで。
太陽の熱にやられて、俺まで熱中症になりかけたのかと考えても見たが、それにしてもあれはどう考えても激似すぎて一瞬眩暈がした。
……あ、やっぱ熱中症だったのか。
「あー、なんも。…テレビ何かやってねえの。」
手元のリモコンを持ち、適当に回したチャンネル。
そこに映るのは、よくありがちな吹奏楽部の特集番組。
夏の大会に向けてより一層熱が入るこの季節。
俺でも知っている全国大会常連の有名校に密着するドキュメント系番組のようだった。
画面にはアルトサックスを吹く少女が大きく映し出されていて、ドクンと心臓が大きく跳ねた。
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