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氏原side‥₁
ランチを終えて、次に心ちゃんが行きたいと言っていた
服屋に来た。
さっきも思ったけど、心ちゃんはあまりフワフワした服は好まないみたいでどちらかと言うと白や黒のシンプルな
デザインに目が行くみたい。
「いらっしゃいませ〜!」
どこからそんな高い声を出しているんだと疑いたくなる
声で、僕らを歓迎する店員さん。
心ちゃんはニコニコしながらお辞儀をして、お店の奥にずんずん進んでいった。
服を見るのは好きだし、レディース物でも少し大きめのサイズなら問題なく着れるから
折角だしと僕もついていくことにした。
「ゆきちゃん!これどうかな!」
次から次へと良さそうな服を持ってきては
キラッキラしながら見せつけてくる心ちゃんに思わず顔が綻ぶ。
「それさっきと同じじゃない?」
「違うよ!この肩のとこ!少しだけレースになってて
可愛いと思わない?さっきのはこれがなかった!」
昔、幸音と一緒に買い物に来たときも
こんな風に振り回された気がする。
やすくんがいつもつまらなそうだから
服見るときは幸人と一緒じゃなきゃとか言われたな。
…なんかめちゃくちゃ想像つく。
「ちょっと!ゆきちゃん聞いてる?!」
「あぁ、ごめんね、こっちの方が女の子らしくて
いいんじゃないかな?」
適当に答えたけど正直僕も何でもいい。
むしろ違いもよくわかってない。
ただ、女の子ならなんて言えば喜ぶのかってことだけは
そこそこわかる。
「そっかなぁ…じゃあやっぱりこっちにしようかな…。
あ、でもまだ暖かいしこれじゃ暑いかなぁ…。」
楽しそうに心ちゃんが選んでいると、後ろから
さっきの甲高い声を上げて呼び込みをしていたお姉さんが近付いてきた。
「こちら秋の新作になっています!そろそろ涼しくなってきたので、問題なく着られると思いますよ〜っ」
「えっ!ほんとですか!!」
ぬかりないよなぁ、こういう人って。
暑いかなあってさっきの会話ちゃんと聞いてるんだもん。
ちなみに僕はあまり断るのが得意じゃないから
こういうお店で人に話しかけられるのが苦手だったりする。
「彼氏さんも、お似合いだと思いませんか〜??」
「え」「え?!」
2人の声が重なった。
店員さんも一足遅れて「え?」を重ねる。
心ちゃんは固まるし、店員さんは不思議そうだし
仕方なく僕が口を開く。
言いたい。声を大にして、辞めてくれと言いたい。
「いえ、彼氏ではなく仲の良い友人の付き添いです。」
あくまで笑顔を崩さずにしれっと応えると
心ちゃんもほっと胸を撫で下ろした。
こんなにお互い仲が良いのに、恋人に見られるのは全力でお断りとか。
それはそれで笑いそうだけどまぁいいや。
「え〜!!そうなんですかっ!?すっごくお似合いに見えてーー…」
「ませんよね?見えないですよね?」
笑顔の圧力。
見られてたまるもんか。
そこで心ちゃん渾身の一言。
「ウチら、恋人じゃなくて、同じ人を好きなライバル同士なんです!」
さすがの店員さんもこれには苦笑いで、そそくさと退散していった。
……………この純粋地雷女。
と、頭の中で心ちゃんに罵声を浴びせておいた。
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