アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
197
-
目を開けると、いつもの事ながら隣に幸人は居なかった。
変わりに、カチャカチャと無機質な音がキッチンの方から響く。
時計は―――…10時少し前。
そうだ、今日は幸人がデートしたいって
俺を誘ってくれた日だった。
週末なんてほとんど一緒に居るのに
改めてそんなふうに誘うから
余程行きたい店でもあるのだろうか?
寝癖をクシャリと指で慣らしながら
音の聞こえる方へ向かう。
そこにはフンフンと鼻歌なんかを歌いながら
上機嫌で朝食を作る幸人がいた。
「……………はよ。」
「っえ、康明?おはよう。早いね。」
いや、お前のほうが早いだろう。
どう考えても。
外には規則正しく並べて干された洗濯物
テーブルに置いてあるのは昨日の夜は無かった
読みかけの本。
そして昨日の夜から卵や牛乳を混ぜた液体に浸してあった
バケットが、今はフライパンで甘い香りをさせてこんがり美味しそうに焼けている。
「朝から甘すぎるかな?」
「んーん、うまそ。ハチミツある?」
「勿論。」
普段あまり甘いものは得意じゃないけど
苦いコーヒーと一緒なら、食えない事はない。
それに、幸人が作ってくれるものは
俺の好みにあわせてか、クド過ぎないものが多くて
すごく食べやすい。
そんな所にも少しの優越感を感じながら
のんびりと旅番組なんかを見て食事を終えた。
流しに食器を持っていって
洗うのは俺、拭くのが幸人。
いつもじゃないけど、俺の寝起きがいい日は
こうして幸人を手伝ったりもする。
「なぁ、お前今日どっか行きたいところでもあんの?」
「…え?」
何のこと?とでも言いたげな表情に少し困惑する。
だって、今日は幸人がデートしたいって
誘ってきたんじゃないか。
「…………あぁ、先週の話ね、
特別どこかに行きたいとかじゃなくて、康明と…
過ごしたかっただけだから…。」
「…………ふぅん?」
変なやつだな。
そう言って笑おうと思ったのに
幸人が何だかいつもと違うから
何が違うかと聞かれたら困るけど
いつもの、余裕というか
包容力というか、そんな感じの言葉で言い表せない何かが
いつもと違ったから
何も話を続けられないかわりに
気付けば心臓は忙しなく動いていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
199 / 448