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氏原side‥₃
遅めの食事
少食の康明と2人なら、小さ目のピザ1枚あればお腹は
充分満たされる。
冷蔵庫に入っていた缶ビールを2つ手に取り
三角のショートケーキに2と6の大きすぎるろうそくを立てて
まだ温かいピザをテーブルの中心に置けば
間もなく小さなパーティー会場が完成する。
「よし。電気消すか。」
「え、ちゃんとやる感じ?」
冗談かと思えば康明の顔は真剣で
いつもの意地悪な遊びではないんだと思った。
僕の誕生日なのに、そんな嬉しそうに祝われたら
明日も明後日も毎日誕生日ならいいのにとか
子供みたいなことを考えそうになる。
二本のろうそくに火が灯り、室内の照明が落ちた。
「はーっぴばーすでーとぅーゆ…」
「やめてやめて!それはいいから!恥ずかしいから!」
手を叩いて一人で歌い出す康明は流石にシュール過ぎた
けど、
初めて聞いた歌声がビックリするほど音痴だったのは墓場まで持っていこうと決めた。
ろうそくを吹き消すと、周りに紐の燃えた独特の香りが
広がり、
その懐かしさに思わず笑みをこぼす。
「…結局、こんな事しかしてやれなくてごめんな。」
「ぜんっっぜん、”こんな事”なんかじゃない!
すっごく嬉しいよ。ありがとう。」
そう言うと、康明は満足そうに微笑んだ
テレビを見るでもなく、音楽が流れているでもない
静かな空間で、何でもない会話を楽しみながら
ピザを口に入れる。
残りが半分になったとき
ふと、康明が思い出したように口を開いた。
「そういえば幸人、さっき何言おうとした?」
「…え?」
暖かく、幸せな空気の中
僕の心臓だけが動きを早める。
けれど、時間は待ってはくれない
同じ人を好きな親友に高らかに宣言しておいて
言わないという選択肢は無いだろう。
「…うん、あのね。」
「ん?」
何を言われるか、珍しく康明は僕の考えを読み取れていないようだった。
意地悪に笑う事もなく、言わせようとすることも無く
じっと、僕の言葉を待っている
何度も脳内で繰り返した台詞を思い起こす。
「僕はね、康明に出会えて――…」
今日が終わるまで、あと30分。
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