アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
227
-
幸人の涙を袖で拭って、下に落ちていたシャツとカーディガンを拾い上げる。
呼吸がようやく落ち着いてきた幸人からゆっくりと身体を離して後ろを振り向いた。
生徒だとか、男だとか関係なく、
こんなに誰かに怒りを覚えたのは初めてだった。
理由はわからない。
幸人に触れたこと
幸人を泣かせたこと
幸人を怖がらせたこと
幸人を襲いかけたこと
幸人が嫌がる事をしたこと
上げだしたらきりがない。
幸人の事を好きなくせにどうして幸人にこんな真似…。
「…おい、てめぇ。」
俺の声はあまりにも冷たく、これが自分から発せられたものだと理解するのには少し時間がかかった。
それは幸人も同じだったようで、
俺の服の裾をくっと掴んで止められた。
でも、ごめん。幸人。
無理だわ。止められねえ。
トモナリの前髪をぐしゃりと掴みあげ、
頬めがけて拳を振り上げたその時
視界が大きく揺れて、その場に座り込んだ。
「康明?!」
悲鳴にも似た幸人声がすぐ後ろで聞こえた。
どうしてだよ。
意識ははっきりしてるのに、身体が思うように動かねえ。
興奮で痛みを忘れていた頭が再びガンガンと奥で響く。
肩に置かれた冷たい手は幸人のもので、
すぐ近くに幸人の気配を感じるのに
「大丈夫だ」と言ってやることも出来ない。
くそ。
こんな時に―――…っ
「どうせ寝てない上に飯も食ってないんだろ、お前。」
頭上に落ちてくるのは、相変わらず何を考えているのかわからない冷たい声だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
229 / 448