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氏原side‥₁
もたれ掛かる康明の頭を膝の上に移動させる。
その間もピクリとも動かない康明は、かなり疲れが溜まっていたようで、気づいてあげられなかったのが悔しい。
目の下のクマ、細い身体は何だか更に痩せた気がする。
階段を1階降りただけであんなに息切れする康明は初めて見たし、結果的に手を上げずに済んだから良かったとしても、兎毛成君に手を振り上げたとき、立っていることすら出来なかった。
一体どれほど僕の事を考えてくれていたんだろうか。
食事も、睡眠も取れないほど弱っているだなんて。
僕ばかりが彼を好きだと思っていたけれど
案外、そうでもなかったということだろうか。
「…2人とも、本当にありがとう。」
心配そうな顔をして康明を眺める2人にもう一度、頭を下げた。
「僕は別に。こいつが来なかったら本当に氏原先生襲うつもりだったよ。だって僕氏原先生が大好きだもん。」
「…兎毛成君……。」
そういいつつも、康明を煽るような動きをわざわざ取りながら、康明が動くのを待っていてくれた。
康明に殴られそうになっても変わらず冷静で、康明を淡々と諭していた。
心ちゃんも―――…。
僕は振られたんだから、僕の事なんてほっといて自分の良いように動けばよかったのに。
もう。みんなしてお人よしが過ぎるんだから。
けれど、そんな人たちが周りに居なければ
僕たちはもうずっとあのままだったかもしれない。
僕の膝を枕にして眠る康明と気持ちが通じたのは、紛れもなく目の前にいる大切な親友と、生徒のお陰だ。
「こ…これで、別れたりっしたら…許さないんだからねぇ~……っ」
ずっと黙っていた心ちゃんの、真っ赤な瞳からは大粒の涙が溢れ出す。
その涙の中には、心ちゃんは自覚がなくとも、どこかに”悔しい”や”つらい”という感情が混ざりこんでいるに違いない。
それも踏まえて、心ちゃんには今日の、この選択が間違っていなかったんだと認めてもらえるように、
この先を生きなければならない。
「約束するね。ずっと、康明の事大切にするから。」
涙を流す心ちゃんの口元がかすかに緩んだ。
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