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渡辺side‥
教室に戻ってきた高木っちは、さっきとは打って変わってテンションがダダ下がりだった。
一瞬で何かあったんだろうなってことは察しがついたけど、何かあったの?なんてうかつに聞いて、もし更に落ち込ませてしまったら大変だからそっとしておくことにした。
「……おい、絆創膏。」
「あー、ありがとう高木っち!助かる~っ。」
なるべくいつも通りを装いながら、
その裏で高木っちの反応を見る。
いつもなら、このあと1イジり挟まれる。
それは例えば
「奇妙な爪してっからだ」とか
「お前じゃなくてカッターが怪我してんじゃねえの」とか。
なのに
なのに……。
「……おー。気をつけろよ。」
ってそれだけ言って自分のデスクに戻っていった。
もう、ゆきちゃん何したの。ねえ。
元気なさ過ぎて逆に面白い。
高木っちの表情を読み取れるのはウチの特技だ。
だから今のこの表情からして、この前みたいな食欲も睡眠欲も失われて死にそうになってる感じではないと思う。
時々何かを考える素振りで、小さく舌打ちなんか打っちゃって、
そうだな。この顔は悲しいとか苦しいっていうより……怒りに近いような…?
でも怒ってる時とはまた違う。
ちょっと寂しそうな顔して完全にショゲてて時々見せる怒り顔…。
まさかこれは。
…わかったかもしれない。
「ねえ高木っち?」
「……あ?」
「誰に嫉妬してんのさ。」
「………え。」
当たったみたいだ。
さっすがウチの洞察力。
図星の時は少し間があって、一瞬瞳が揺れる。
他の人がこういう時にどんな反応をするのかわからないけど、少なくとも高木っちは決まってこの反応を見せてくれるから、慣れてしまえばわかりやすい。
「……別になんもねえ。」
「うそだな。ウチの事甘く見てるっしょ?」
「おー、見てるな。」
「んおおお?!即答は酷い!!」
「んー、わりぃ。」
リアルに驚いて思わず変な声が出ちゃったけど、それに突っ込みも入れないくらい高木っちはテンションが低い。
こりゃ相当へこませたな、ゆきちゃん。
高木っちをここまでへばらせるのはこの世でたった一人、ゆきちゃんしかいないもん。
あとでゆきちゃん問い詰めてこよう。
高木っちにこれ以上根掘り葉掘り聞くのはかわいそう…。
教室の隅で真っ白に燃え尽きてる高木っちを横目に見つつ、段ボールの屋根制作を頑張った。
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