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して、幕を開けた文化祭。
天気はどんよりと曇り、時折雨がぱらついている。
今朝も鍵を使って入ってきていたらしい幸人は、トマトとレタス、ツナマヨ、玉子のサンドイッチを作っておいてくれたようだ。
少食の俺に合わせて薄切りの食パンを小さめにカットしてくれてあるのは嬉しい。嬉しいけど。
どうせコレ作ってる時もあいつはRickyの事ばっか考えてたんだよなぁ。とか考え出したら止まらなくて
俺の頭の中は今日の天気と同じくどんより曇り空だ。
ちびちびとサンドイッチを摘まんでいる中、こんな朝っぱらにも関わらずクラスのグループは動きっぱなしだ。
本当にガキは朝から元気だな。
ちらりと通知を覗くと、スマホ画面は俺の名前でびっしり埋まっていた。
「うお、何だこれ…。」
何かしたっけ、俺。
そう思っていると、電話までかかってきた。
表示される文字は「nabe」
渡辺だ。
「……はい?」
『高木っち遅いんだけど!!もうみんな学校居るよ?!』
「はんへはよ…」(なんでだよ)
もぐもぐとサンドイッチを食べながら答える。
電話越しに渡辺のため息が聞こえた。
『モール持ってきてくれないと完成しないんだけどー!!
もー、暢気に朝ご飯食べてるしー!!』
渡辺の実況めいた言葉に、多分だけど教室内から「えー」とか「まじかー」って声が聞こえた気がする。
そして渡辺からの電話で、ある程度覚醒した頭が叫ぶ。
あ、俺がモール持ってんじゃん。と。
「3分で家でるわ。」
『よっし待ってる!』
無理に詰め込んだものが口の中で混ざる。
今日知ったのは、硬めの玉子焼きと酸味の強いトマトのコラボは口の中が地獄と化すと言う事。
こいつらだけは混ぜるなよ、と幸人に教えてやらないと。
いつもより早くに出た外の景色は、いつもより穏やかで、道もそれほど混んでない。もっと普段から余裕を持って起きていれば、毎朝毎朝通勤のたびに渋滞にハマってイラつくこともないって事か。
今度気が向いたら幸人と同じくらいの時間に俺も家を出てみようか。
………あー、もう。
俺はこんなに幸人ばかりだってのに。
飯食ってても通勤してても考えるのは幸人の事だというのに。
あいつの頭の中には俺以外の男が存在してる。
しかも、俺の昔の友達。
顔を見せる気はないだろうけど、
激太りでもしてない限り俺よりずっとイケメン。
俺様でキザでナルシスト。
なのにそのどれもが似合ってしまうルックスだ。
だから、幸人がどこにもいかない様に
独占欲を形にしたものが、俺の鞄の底で眠っている。
少しの不安と、腰を疼かせる期待を持ち、
文化祭1日目、内部公開が始まった。
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