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俺がまだ小学校の低学年だった頃の、とある日。
冬の寒い薄暗い放課後の教室の片隅で…クラスの男子共による度を越えた嫌がらせが行われていた。
最近転校してきたばかりの男子がターゲットにされているらしくそいつは数人の奴らに囲まれて履いているズボンを下されそうになっていて。
元々そーゆー類のコトもそーゆークソみたいな奴らも大嫌いだったから迷うことなく俺はそいつとアホ共の間に割って入ってボコり、ボコられながらの大乱闘を繰り広げた。
その結果…俺には“クラスで一番強いヤツ”というつまらん勲章が授けられそして…。
「ありがとう瀬能くん!このご恩は一生忘れません!」
……と。
どうやら一生物の忠犬を手に入れたようだった。
いつも俺の側から離れずどこへだってついてくるそいつ…成田洋介。
成田は背がすげー小さくて顔は女みたいに変に可愛かった。
だから…どうやらその…クラスのやつらにズボンを下されそうになっていた、らしい。
それを聞いて俺は軽く引いたのを覚えている。
そしてそれから季節は流れて。
「瀬能くーん!」
夏には一緒に学校のプールに入り浸り。
「瀬能ー!」
冬は成田の親父さんに連れて行ってもらってスキー三昧。
そして気付けば…。
「圭ちゃん!」
俺はこの成田洋介と同じ高校に入学して…名実共に“幼馴染み”という腐れ縁を繋がれてしまっていた。
しかも…何が許せないって…。
「…デカい声で呼ぶなよ成田。恥ずかしい。」
「ごめんごめん!ってかなんで俺の名前呼んでくれないの、圭ちゃん?」
「なんでお前を名前で呼ばなきゃなんねぇんだよ。」
「だってー俺と圭ちゃんの仲でしょ?」
ニコニコと笑う顔は…昔の面影をかろうじて残している程度。
可愛かったヤツの顔はこの数年ですっかり大人の顔付きになっていて…。
「…どんな仲だよ。」
「主従?」
俺の極近くにあったヤツの顔は…俺から離れてはるか上にいってしまっていた。
…要するに。
ガキの頃はあんなに小さくて可愛かったくせに今のヤツは長身のイケメン君とやらに変貌していて年中女子共に黄色い声で騒がれている。
一方の俺はといえば…成長期のくせに身長は中学の途中で止まってしまい今は標準チョイ上に乗るかどうかって程度。
外見だってお世辞にも大人顔とは言い難く…つまり、昔とあまり変わらずな感じだ。
だから、無性に…
「マジムカつくな、お前。」
「え!なんで!?」
デカい体をグッと折り曲げて顔を寄せる成田が相当ムカつく。
そのくせ長く長く付き合っているおかげで情も半端ないから困るんだ。
「ね、圭ちゃん?部活なんにするか決めた?」
ブーたれてる俺を気にせず話し出す成田を見上げて首を横に振る。
「んじゃ一緒にバスケ部入んない?」
「断る。」
「即答!?」
「お前とずっと一緒かと思うだけでウンザリだ。」
「えー愛されてるなぁ、俺!」
「なんでそうなる。」
距離を開けて歩いているのにいつの間にか隣にピッタリとくっついてくる成田。
今でさえこんななのに…。
「クラスも違ったことだし。楽しい学校生活が送れそうで俺は嬉しい。」
「お昼は一緒に食べようね!迎えにいくし。」
「断る。」
「いやいやこれだけは譲れないから!」
わふわふと尻尾を振り続けるヤツを新しい教室に突き飛ばしてバイバイと手を振る。
それでもまだ戻ってこようとしているヤツに背を向けて俺は足早にその場を去った。
…全く。
親離れならぬ“俺離れ”…って俺も上手いこと考えたな…なんて苦笑いが出る。
満更外れじゃないその言葉の通りにヤツはガキの頃にあったあの一件以来、俺の側を離れようとはしない。
そして…実のところそれ以外にも俺達が離れられないってことにはちょっとした理由もあったりするんだ。
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