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成田の風呂に怒鳴り込んだあと。
冷静になった俺は抱き締められて濡れたスウェットからパジャマに着替えてその足でキッチンに入った。
腕まくりをしながら冷蔵庫を開けて玉子と鮭の瓶詰を取り出し冷凍室から凍らせていたご飯を出してレンジで解凍。
ボウルに玉子を割りほぐしその中に解凍したご飯を入れて軽く混ぜ合わせ、熱していたフライパンにそれを流して……としていると。
「あれっ!?」
「…るせー。」
風呂を上がったヤツの嬉しそうな声に舌打ちをしながら作業に没頭。
そうしてる間も背後にぴったりとくっついたヤツは俺から離れようとはしなかった。
「成田、皿。」
「はいよ。」
出来上がったそれをヤツが持ってきた二人分の皿の一枚にだけ山盛り盛る。
ジッと見ていたヤツはそれをテーブルに持っていきすがら食器棚から小さめの皿一枚と銀のスプーンを二本取り出した。
…なんていうか…。
こういう時にアイツの中での“俺”の特別感ってのをイヤってほど感じてしまう。
「超ごちそう!激嬉しい!」
「はぁ?ただのチャーハンだろ。」
大皿から小皿に俺の分を分けながら成田はチラとだけ俺を見てから口元を緩めて。
「“俺”がリクエストした“大好物”の鮭チャーハン、だよ。」
どこか嬉しそうにそう言ってから正面の俺の席に小皿によそった“成田の大好物の鮭チャーハン”を置いた。
間違いではないが…なんとなく気に入らねぇ。
俺がこうしてわざわざチャーハンを作ったってことも…
それがヤツの大好物のモンだってのも…
それにヤツが気付いて…喜んでるってのも全部が、だ。
デカめの舌打ちをしながらその場を離れた俺はリビングに向かい電話台の下の棚から蓋つきのケースを取り出して戻り椅子に座る成田の横に立った。
「足、出せよ。」
言いながらその場にあぐらをかいて座り持ってきたケースのフタを開ける…が、椅子に座ってるヤツは微動だにしない。
訝しみながら見上げるとヤツは切れ長の目をまん丸に見開きその目で俺を凝視した状態でフリーズしていて。
“への字”に結んでる唇やらそんなん色々諸々があまりにも面白過ぎて。
不覚にも俺はプッと吹き出してしまった。
「ひどっ…なに…」
「お前の方がひでぇよ!なんだよそれ…その顔…」
「顔がひどいとか…」
笑いながらヤツの足に触れグッと引っ張りあぐらをかいてる腿の上に乗せる。
するとヤツは急に押し黙るとごくり、と喉を鳴らしてから俺の頬にそのデカい掌を添えた。
「…んだよ。」
「えっ…や、なんつぅか…」
言いながらゆっくりとヤツの顔が近付いてくる。
「…おい。」
「うん…」
「“うん”じゃねぇ…」
ヤツの鼻先が俺の鼻先に触れヤツの顔が少し傾く。
この…感じ、は。
「テメェ…キスしようとしてんだろ。」
「…あのねぇ。」
苦笑いをした成田はそれでもめげずに顔を近付けてきて…俺の唇に自分のを重ねた。
一度触れて…もう一度触れて離れる。
焦らすような動きにその作戦通りに焦れた俺は離れたヤツの唇に自分のを重ねて同じように離れてやった。
するとヤツは離れた俺の後頭部にそのデカい掌を添えるなりグッと引き寄せてきて。
「なにそれ…中途半端に引かないでよ…」
「はぁ?そりゃお前だろ…っ…」
文句を言い途中の唇にキスをしてきた。
触れるだけのキスを何度かしてからヤツは俺の腿に置いていた足を引き抜きその足を軸にしながら椅子から立ち上がるとキスをしながら器用に床に腰を下ろした。
更に近くなったヤツの顔は…なんつーか。
「テメェ…ムダにまつ毛長ぇんだよ…」
「はっ?」
久々に明るいところでみたヤツの顔は…なんつーかホントに“キレイ”だった。
今まで気にしてなかったし眼中にもなかったが…こうしてまじまじと見てみると色んな発見がある。
まつ毛は長ぇし、鼻は高ぇし目元は爽やか?だし。
アゴのラインなんかもすっきりしてるし…って。
「…なんなんだテメェは。」
「はっ?さっきから圭ちゃんなんか色々考えてる?」
「考えてはねぇ!ただお前の顔見てると色々ムカつくんだよ!」
そう、なんかわかんねぇけど色々ムカつくんだ。
なんでそう思うのかは全くわかんねぇ、それがまたムカつく。
ただ…
さっきのバイト先でのアノコト?
あれ以来…なんか気が収まらないとゆーか…なんというか。
ぐっ。
俺の腕に触れていたヤツの手に急に力がこもる。
「なんだよいきなり!」
「…圭。」
突然の“名呼び”にドキリとする。
ヤツがこう呼ぶのは…エロいことしてる時のどさくさ紛れの時だけだから。
「テメェ…」
「圭がイライラしてるのはさっきのバイトの裏口でのことが原因?」
ギクリ。
ん?
…なんで“ギクリ”?
自分の反応に“?”を投げかけてるとヤツは。
「もうさ、俺我慢するのやめるわ。」
と、短く言うなり立ち上がり俺の腕を掴んで強く引いた。
「いっ、てぇな!なにしやがんだ…」
「ほら立って。」
立ち上がらせられた俺は文句を言う間もなく持ち上げられ、あろうことかそのままヤツの肩に担ぎあげられた。
っつーか!
「テメェ!あぶねーじゃねぇか!」
「暴れんなって。」
「暴れるに決まってんだろ!この…っ!」
ヤツの肩の上でジタバタするがガッシリと抱えられてそれ以上の動きができない。
それよりも…
いつもより低めの声と俺のことを考えていないようなこの扱いに少なからず焦る自分がいる。
俺は…今日の今日までコイツに同じような扱いはしてもされたことはなかったから。
「成田っ、下ろせって…」
リビングを出たヤツは速度と雰囲気を変えずに廊下を歩き階段を上がり始める。
「本気で怒るぞっ、テメェ…」
「あんま暴れないでって言ってんだろ。落ちたらどーすんの。」
「だったら落とせ!今すぐ落とせ!」
わめく俺を無視して階段を上がり切ったヤツは俺の部屋…を素通りして自分の部屋の前に立ちドアを引いて中へ入った。
カチャン。
後ろ手にドアが閉められ鍵がかけられる。
初めて感じる身の危険?みたいなものを感じていると。
どさっ!
薄暗くてよくわからないけど多分、ベッドに下ろされたんだと思う。
やっと自由になった俺は即座に腕をついて起き上がりその場から逃げようと今きた方に身体を向けた。
シャッ!
同時にカーテンが開けられ薄暗かった部屋に月明かりが差し込み中の様子がわかるようになる。
ベッドから立ち上がった俺はドアに向けて走り出しノブに手をかけて鍵を外し…。
「圭?」
背後からの声にその手を止めた。
なんで…俺の手は動かないんだ?
もう鍵は開けたからこのノブを回すだけなのに?
自分で自分のことがわからず“?”が浮かぶ。
そうしてるうちに背後に立ったヤツの腕が俺の身体に回されて。
「逃げないの?」
低く言ったその唇が俺の首筋に触れた。
少し冷えた空気にヤツの熱い息が伝わりその舌が首筋に熱を落とす。
なんか…
なんだ?
いつもと違うこの感じ。
「さっき言ったよね?俺、もう我慢しないから…今こっから出ないと犯すよ?」
「テメェは…いつもそうやって俺を騙すんだな…」
絞り出すような声に反応してヤツの動きが止まる。
俺は小さく息を吐きながらその場で振り返って…月明りを背負ってるヤツの顔を見上げた。
「お前は…俺が“いい”って言うまで抱かないって言ってたよな?」
「……。」
「なのになんで急に犯すとか言ってんの。この嘘つきが。」
「圭…」
「最初ん時だってそうだろ?キスしかしないって言ったくせに結局フェラはするは俺にぶっかけるは…マジ信じらんねぇんだけど。」
言うだけ言ってヤツからの返事を待つ。
逆光で表情はわからないが成田は静かにひとつ息を吐いてから俺の身体に回してた腕を解いて。
「…好きなんだ。」
ひとことだけそう言った。
「はぁ?つーか好きならなにしてもいいのかよ。」
「だってしょうがないじゃん。」
「はぁ?なにが?なにがしょうがないんだよ。」
「だってそうでもしないと圭ちゃんは俺が言ってること本気にしないでしょ。」
さっきまでの感じがいつもの成田に変わり俺はホッと一安心。
だから…ってんじゃないけどこの際だから、と。
「だから何度も言ってるよな。俺はお前の気持ちなんか知らねぇし受けるつもりもねぇよ。だけど…お前が俺を本気で好きなんだってのは理解した。」
「“理解”はしたけどでもそれを真剣に考えてはくれないんでしょ?」
「当たり前だろ!俺もお前も男なんだぞ?わかってんのか?キメェし!」
「なに言っちゃってんだよ。もうキスもエロいコトも全然平気じゃんよ。」
呆れたような成田の声に苦笑いが出る。
図星、だからな。
「それにさ?」
ずいっ、と顔が寄せられヤツの唇からからかうような小さな笑いが出て。
「圭のそのイライラ、さっきの娘が原因だと思うよ。」
「あん?」
ヤツの言葉の意味がわからず瞬きを数回。
その間の沈黙の意味をわかってるのかヤツはからかい度を更に上げた様子で。
「それってヤキモチだよ?」
発せられた言葉に俺は一瞬言葉を失った。
「…………は?」
「自覚ないんだね?」
クスクスと笑ったヤツは離していた腕を再び俺に回しグッと抱き締めてきて。
「だからもう…我慢しなくてもいいかと思って。」
そう言った唇を寄せ俺の唇に重ねてきた。
何度か啄まれて止まっていた思考が動き出す。
ヤキモチだ?
なんだそりゃ?
それじゃまるで…?
「…っ、なんだよそれ…っ」
「なに…?」
「それじゃまるで…俺が…っ…」
“それじゃまるで、俺がお前を好きみたいじゃねぇか!”
そう言おうとした唇はヤツに塞がれ吐き出すための息は全てヤツに奪われてしまった。
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