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訓練兵時代 立体機動訓練
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森の中での、立体機動装置を使用した訓練。まずはウォーミングアップを兼ねて教科書通りの動きをこなし、巨人を模したハリボテを次々に狩っていく。
ふと後ろを見ると、コニーが追ってきていた。通常の動きの際、コニーは俺よりも素早い。俺の見つけた獲物を横から掻っ攫う腹づもりだろう、ならば以前そうであったように上からサシャが見ているのだろうと推測する。…じゃあ、もうウォーミングアップは終わりだ。
覚えていることを確かめるのも兼ねて、兵長に必死に頼み込んで教えてもらった技術を披露してやることにした。目標が視界の端に入った瞬間、コニーが前に出てこようとしている気配を感じ取り、大きな声で牽制する。
「おいコニー、サシャ!今からとっておきを見せてやるよ!」
俺が気付いていると思っていなかったらしいコニーが目を見開いているのを口角を引き上げながら一瞥し、目標に目を向ける。
『重心の移動は、常にここを意識すると素早くできる。覚えておけ』
『スピードを上げたい時は回転をかけるといい』
『おいグズ、そうじゃねぇ。腕も一緒にするんだ』
日々を思い出しながら、一気にスピードを上げる。ガスの出力だけでは出せないスピードだ。目標まで100m、少しずつ回転をかけていく。左右の木の間で、最短距離を舞うように進む。ーーー目標まで、10m。一気に回転をかけ、うなじを削いだ後も止まらず切り刻んだ。
「…やべ、やりすぎた」
轟音の後の沈黙を破ると、隣にコニーとサシャが寄ってきた。コニーは未だ呆然としていて、サシャはすごいですー!と手を叩いている。
しかし、気合いが入りすぎて壊してしまっては、減点にはならないだろうがペナルティがありそうだ。しかも倒してしまったり、逸れた所を斬りつけるなんてレベルじゃない、そもそも原形を留めていない。この音だと近くの教官がすぐに来るだろう。
「…イェーガー」
想像以上に早かった。どんなペナルティがあるだろうかと恐る恐る振り返ると、驚いたような教官の顔がそこにあった。
「申し訳ありません、勢い余って装置を壊してしまいました」
「いや、いい。その動きは評価に値する。……それをどこで習った?まるで兵士長を見ているようだ……誰に教わった?」
まさか、本人から習ったとは言えない。俺は今年訓練兵を卒業する身だ、そんな時間などあるはずもない。第一兵長と言っても『今の』兵長ではないのだ、余計に不審がられることは間違いないだろう。
「……以前、巨人に襲われているところを兵士長に救って頂いた事があります。それに憧れて、……訓練中に幾度か練習していました。」
「……そうか。お前は確かシガンシナ区出身だったな。……そのまま励め。」
「はっ!ありがとうございます!」
……どうやらお咎め無しのようだ。
今回、最初の超大型巨人襲来の際は幸運にも調査兵団が壁外調査から帰還した後だったため、被害は最小限に留めることができた。母さんは助けることが出来なかったけれど、そのことに絶望して動くことの出来なかった俺、そしてそんな俺をどうにかして動かそうとしていたミカサが2体の巨人に挟まれ、もう駄目だと思った時に、兵長が現れたのだ。そして俺たちを救い、無事を確認した後、颯爽と残りの巨人を駆逐するために飛び上がった。……ああ、やっぱり兵長はかっこいいなぁ、だなんて場違いなことを考えながらミカサと逃げたのを覚えている。
しかし気を付けなければ、いつもこんなことを繰り返していては嫌な教官の時には何か言われかねない。咄嗟の言い訳は何とか通り、更にはある程度理解のある教官だったため今回は良かったが、先のことを考えると、やはりこれは『とっておき』にすべきなんだろう。
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