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番外編 追いかけていた夢
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秩序ある世界さまより諦めた5つのお題お借りしました。原作では何があろうと諦めることなんてなさそうな彼ですが、私の小説では関係ない。
そして本編とも関係ありません。新たに分岐していった世界の果てでの、ひとつの可能性と思って頂ければ。細かい設定は考えていないので、雰囲気で読んでください。
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本当は、どこかでわかっていたのだと思う。この、閉鎖された世界では。ただ一人自分だけが抗うのでは、何一つ変えることなどできやしないのだと。
…それでも。
「……うみ、が、見たかった、なぁ」
昔アルミンに教えてもらってから、憧れてやまなかった、海。幾度となく繰り返してきたこの世界で、何度も何度も壁の外へ挑んで。…それでも、ただの一度さえその願いが叶えられることはなかった。きっと、身の丈に合わない願いだったんだろう。俺なんかが、かつて自由を求めて空を飛んでいた先輩方が叶えられなかったことを、叶えられるはずもなかったんだ。…そして、今回に至っては、先の土台にすらなれそうもない。
この世界の結末は、俺が最も恐れたものだった。一番、あってはならない結末。俺のせいで、俺一人の失敗のせいで、調査兵団は解散させられた。俺が、仲間を信じられなかったから。俺が、自分の力を過信しすぎていたから。人類が巨人に勝利するためには、色々な人の協力が必要だった。けれど俺は、本当の意味でそれを理解していなかった。結局ひとりでなんとかしようとして、どうしようもなくて、暴走して。ひとりでなんて何もできないと、わかっていなかった。
団長は、昨日大衆の前で処刑された。化け物である俺は、3日後の正午、処刑が確定している。…この世界の人類は、滅びの道へ大きな一歩を踏み出したのだ。俺の罪は、底知れない。
この繰り返しになんの意味があるのか。何度も考えて、しかし答えなど出るはずもなかった。ひとりになる度に自問自答を繰り返し、もう考えることに疲れてしまった。
それぞれの世界の中で、次こそは、と様々なシミュレーションを行ってきたが、どうすることもできず。果てには人類を死へ導いてしまい、恩人である団長をも殺してしまった。
…俺は、夢をもってはいけなかったのだ。夢があるから、結局自分のためにしか動くことができなくて。誰一人救えないどころか、全てを絶望に突き落としてしまった。
もう、いやだ。絶望などこれ以上できようもないほどにし切った。今回が、トドメだと思う。なのに、きっと3日後の処刑のあと、また朝日で目を覚ますんだ。
追いかけていた夢が、壊れた日。
(ひとり地下牢の中で、自分の愚かさに嘆きながら。それでも夢みたものを、求めてやまなかった。そんな結果がこの結末だと、気付きたくなんてなかった)
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