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番外編 頑張り続けること
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牢の外が騒がしい。まだ眠っていたいけれど、こんなバタバタとしている中眠る気にはなれない。
ーーーそう、今日は処刑の日。長い長い人生の幕を閉じる日。
化け物が暴れ出した時に備えて、かなり大仰な準備をしているようだ。そんな、怯えなくったって人間に危害なんて加えないのに。わかってはいたけれど、そんなに信用が無かったのかと自覚すると、少し悲しくなった。
起き上がり、牢の外にいる兵士に俺はどうやって死ぬんですか、と聞いてみた。当たり前だが、返ってくる言葉はなかった。向けられる視線もなかった。
これから死んでいく化け物は、そもそも存在していたことを認められなくなったのだろうと思う。きっと俺のいた記録は全て抹消されるだろう。それは、人類にとって幸せなことなのだろうか。どうせじきに終わってしまう世界なのだから、どちらでも構いやしないだろうけれど。こんなことを考えてしまうなんて、やっぱり最低だ、と苦笑した。
…………………………………………………
「エレン・イェーガー。時間だ」
「…はい」
どうやら処刑の時間が来たらしい。時間などはなから伝えられていなかったから、これが早かったのか遅かったのかはわからないが。手枷を嵌められたまま鎖を取り付けられ、そのまま引かれる。
ずっと牢の中で鎖に繋がれていたから、暫く歩いていない。おかげで足が自分のものではないみたいだ。それなのに俺の都合なんてお構いなしに進んでいくものだから、足がもつれてしまった。あ、と思った時にはもう体勢は思い切り傾いていて。手は宙に浮いた状態で、不恰好に這いつくばるようにして転んだ。
あぁ、みじめだなぁ。
おい化け物が転んだぞ、みっともねぇ転び方しやがって。嘲り笑われ、けれど手は使えないし鎖にも繋がれ中途半端に浮いているから、上手く立つこともできなくて。……みじめ、だなぁ。まるで今までの自分を振り返っているみたいだ。
母さんを殺した巨人が許せなくて、自分もその憎むべき巨人で。自分が人間なのか化け物なのかすらわからなくて、色々な野望や策略の中で無様に足掻き続けて。やっと夢が叶う、けれどそれも失敗に終わり。結局、全部全部空回り。この繰り返しが誰かの手によるものなら、その眺めているだろう誰かにとってはさぞ滑稽だったろう、可笑しかったろう。
そうしてもぞもぞと動いていると、不意に脇に手を入れられ、引き上げられた。驚いてそちらを向くと、不機嫌そうに眉間に皺を寄せている兵長がそこにいた。10日ぶりに見た彼は、きっと今まで以上に多忙な日々を送っていたのだろう、少しばかり窶れて見える。ごめんなさい、それだって俺のせいだ。
「…何ちんたらしてやがる、こっちだって暇じゃねぇんだ」
「も、申し訳ありませんっ…!」
「お前じゃねぇ、エレン。おい憲兵ども、てめぇらはこんなクソガキ一人抱き起こせないほど貧弱なのか?あ?」
「おいおい、そんなに怒るなよ。ちょっと遊んでただけだろ?」
あははははは、と下卑た笑い声が響く中、どんどん刻まれた皺が深くなっていく兵長。まずいと思った時には、憲兵達が既に地に伏していた。血の気が引いていくのを感じる。駄目だ、こんなことをしたら、ただでさえ立場が危ういというのに。
「……黙れ」
「……何をする」
「これは問題だ、由々しき事態だ。なぁ兵士長殿」
「黙れと「申し訳ありません!」……エレン?」
「俺が鎖を無理に引いたばかりに、申し訳ありませんでした!」
兵長の言葉を遮るのはかなりの抵抗があったが致し方ない。何を言っている、と目で訴えられたが、それには首を横に振って返す。駄目です、それ以上は。兵長の立場が悪くなる。どうせもう死ぬんだから、全部俺のせいにすればいい。憲兵達に向き直り深々と頭を下げると、憲兵達がほう、と感嘆の声を上げた。
「いい部下を持ったなぁ」
「まぁ確かに時間が無い、上司思いの化け物に免じて行くとするか」
その化け物の処刑場にな、更に高らかに笑い出す。兵長はかなり不服そうではあるが、俺の意思を汲んでかそれ以上は何も言わなかった。
難産…!
タイトルに沿ってないです失敗。
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