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「わあっー!」
パニックになった僕は、背中に力を集中させることが出来なくて、クルクルと回りながら落ちていく。僕の目に、すごい速さで凛の家の屋根が近づいてくる。凛が両手で口元を覆って、目を見開いている。その少し後ろで浅葱が翼を出して飛び上がろうとしていた。
「あ、浅葱っ!助けて…っ」
浅葱に向かって手を伸ばして必死に声を出す。
浅葱は、僕の叫び声を聞いた筈なのに、低い体勢を元に戻して翼を閉じた。
「え?なんでっ?いやだっ、落ちる…」
ぶつかる!と固く目を閉じた瞬間、僕の身体が力強い腕に抱き止められて、落下が止まった。
ドキドキと胸が激しく鳴って、身体が震える。そっと地面に降ろされた僕は、震える足では立てなくて、フラリとよろけたところを凛が抱きしめてくれた。
「もうっ、青藍のバカっ。無茶したらダメじゃん!心臓が止まるかと思った…!」
ギュウギュウと僕を抱きしめる凛の身体も、微かに震えている。
僕は、急に悲しくなってきて、ポロポロと涙を零しながら謝った。
「ふっ、うっ、ぐずっ。凛、ごめんね…。心配かけて、ごめんね…、うっ、う…っ。しろおじちゃんも、ごめんね…ありがとう…」
僕は、僕の後ろでキラキラと光る銀色の翼を閉じて立つしろおじちゃんを見た。
さっき、落下する僕を止めてくれたのは、しろおじちゃんだ。僕のよく知ってる力強い腕と、しろおじちゃんについた凛の匂いでわかった。
いつも僕が凛に抱きついたら文句を言うしろおじちゃんが、何も言わないで優しく頭を撫でてくれる。
その大きな手に、また僕は涙を零した。
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