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「…なにか?」
天清が振り向いて尋ねた途端、僕達の後をつけるように微かに聞こえていた足音が止まる。
僕もどんな奴なのか顔を見たいけど、もし昨日の奴だったら僕の顔を知られている。仕方なく天清の背中に額を当てて、目を伏せていた。
「…なにが?俺の家がこの先にあるんだけど。君達を追い越そうと思ったけど、男の子同士で手を繋いでるし、邪魔しちゃ悪いかな…と思ってさ。ゆっくりと歩いていただけだ。不安に思わせたなら、悪かったな」
聞こえてきた男の声に、僕の肩がビクン!と跳ねる。
ーーえ?待って?この声…昨日の奴の声だ!この先に家があるなんて嘘だっ。明らかに僕達の後をつけて来たんだ。でもなんで?僕達は、倉橋さんからもらったお守りを持ってるのに…。
僕の反応に気づいて、天清が手に力を込める。
「そうでしたか…。すみません、気を遣わせてしまって。お先にどうぞ」
そう言うと、天清が僕に身体を向けて、僕の顔が隠れるように胸に押しつけた。
「な…っ?」
「静かに。このまま顔を隠してて」
僕は小さく頷いて、天清の制服を掴む。
「ふはっ、すごく仲が良いんだね。でも道の真ん中じゃなく、人目につかない所でした方がいいよ」
「…気をつけます」
男の人が、僕達の横を通り過ぎる。
ジロジロと見られている視線を感じたけど、男の人はそれ以上何も言わずに去って行った。
男の人の気配が完全に消えるまで、僕と天清は、しばらく抱き合っていた。
ついさっきまでの不安が消えて、天清いい匂いするなぁ…なんて思っていると、「青藍、大丈夫?」という声が聞こえてきた。
「あ…、大丈夫。ちょっと緊張したけど」
「そうだな。…あいつが、昨日の奴か?」
身体を離す僕の顔を覗き込んで、天清が聞いてくる。
「顔は確認出来なかったけど…、声がそうだった。あの人、僕達の後をつけた訳じゃなかったのかな?」
「そうみたいだな…倉橋さんのお守りのお陰かな。それよりも、あいつが青藍を斬った奴か…。俺、怒りを抑えるのに必死だったよ」
「うん…。でも、なるべくなら血を流さないで解決したい。今、天狗の郷で話し合いがされていると思うから、とりあえずは見つからないように気をつけよ?」
「青藍がそう言うなら…。あいつ、危ない奴みたいだしな。俺も父さんに報告したから、妖狐族も今対策を練ってると思う。それぞれの結論が出るまで待つか。それより、このルートもダメだな。明日はもっと遠回りになるけど、違う道で帰るか」
「うん…」
天清が、もう一度僕の手を握り直して歩き出す。
一旦家に帰ってから倉橋さんの神社に行こうと思っていたけど、この先の道で男が待ち伏せをしている可能性を考えて、直接神社へ向かうことにした。
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