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咄嗟に僕と天清で倉橋さんを抱えて、後ろへ大きく飛ぶ。飛ぶと同時に、男が腕を振り払い、短剣が空を切った。
「あっぶねー…。何なのあいつ、怖いんだけど」
「うん…、話し合いは無理そうだね」
天清に相槌を打ちながら、短剣の先を見る男に注意を払って、あることに気づく。
「あれ?あの短剣…。…はっ!それにこの匂いは…倉橋さんっ!?」
「ははっ…、大丈夫や。俺としたことがヘマしたわ…」
短剣の先に付着した血と、血の匂いに気づいた僕は、僕の前で膝を着く倉橋さんを見た。
倉橋さんが押さえている右腕の白い生地が、じわりと赤く染まっている。
心配して覗き込んだ僕に、倉橋さんが額に汗を滲ませて「かすっただけや」と笑った瞬間、神社全体の空気が一変した。
一気に気温が下がったのか、吐く息が白く空気が冷たい。夕方とはいえ、まだ明るかった視界が、今は全体に灰色がかっている。
男が何かしたのかと睨むけど、男も訝しげな顔で、周りの様子を窺っている。
「せ、青藍…、何か寒くね?それに暗くなってるんだけど…」
「うん、この神社の敷地が、まるで結界で囲まれたみたいに感じる」
「あ~…悪いな、青藍くんと天清くん…。これ、白がやってるんや」
「「白様が?」」
僕と天清の会話を聞いて、倉橋さんが苦笑いをして答える。
二人で声を揃えて驚いたけど、白様ならこれくらいのことは、簡単に出来るのだろうと納得する。
倉橋さんは、「はあっ」と大きく溜息を吐いて立ち上がると、本殿に向かって大きな声を出した。
「白っ!俺は何ともないっ。大丈夫や。だから怒ったらあかんっ。白は人間に手出ししたらあかんでっ!」
「…目の前でおまえが傷つけられているのを、黙って見てろと言うのか」
静かな声が響いて、ふっ…と本殿の屋根の上に白様が姿を現す。無表情の綺麗な顔からは、感情が読めないけど、よく見ると手に持つ扇子が小さく震えていて、白様がかなり怒っているのだと分かる。
「そうやで。白は神様の使いなんやから、一人の人間に肩入れしたらあかんやん」
呆れたように笑いながら、倉橋さんが本殿を見上げる。
倉橋さんと見つめ合う白様の金色の目が、とても優しい色をしている。白様は、「蒼…」と呟くと、男をきつく睨みつけた。
「だとしても、私の愛し子を傷つけられては、このまま引き下がれぬ!」
「はっ!あんたの素直な気持ちを初めて聞いたぞ」
その時、ふわりと風が舞い上がり、僕達の頭上から楽しそうな銀おじさんの声が聞こえた。
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