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すぐ側に飛んできた短剣を、天清が拾おうと手を伸ばして、銀おじさんに「触るな!」と怒鳴られた。
「その短剣、妖を滅する特別な武器になっている。触れると危険だ」
「…は、はい…」
僕と天清が、固唾を飲んで短剣を見ていると、倉橋さんが、ヒョイと短剣を拾い上げた。
「へぇ…、すごいな、これ。かなりの呪術が施されてんのかな?」
「え?触って大丈夫なんですか?」
「大丈夫やで?人間には害はないみたいやな。こんな物作れるなんて、かなりの力があるんやなぁ」
「…せ…」
「え?なんて?」
男がポツリと何かを呟く。
倉橋さんが聞き返したその時、男が「返せっ!」と叫んでしゃがみ込み、両掌を地面に押し当てた。
「ちっ…!飛べっ!!」
銀おじさんが叫ぶと同時に、男の手元からこちらへ向かって、白い光が地面を這う。
僕は天清を、銀おじさんは凛と清忠さんを、浅葱が倉橋さんを抱えて、翼を出して飛び上がった。
「間一髪…っ、危ね…え?」
浅葱の視線の先を追って、下を見た。
男が地面に押し当てていた両手を勢いよく上げると、地面を這う白い光が、上空に浮かぶ僕らを目掛けて飛んできた。
僕達は、更に上空へと飛んで光を避ける。
倉橋さんが「難儀やな…」と呟いて、ズボンのポケットから何かを出して投げた。それは、空中で大きな蛇の姿になって男に飛びかかり、彼の身体にグルグルと巻きついた。
「くそっ!何だよこれっ?離せよっ!」
男が身体を捩ってもがくけど、蛇はビクともしない。
光が消えたことを確認して、僕達はゆっくりと下降しながら、倉橋さんの術に驚きの声を上げた。
「倉橋って、やっぱりすごいねぇ!ねぇ銀ちゃん」
「ああ、素晴らしい力だ」
「てかさ、何で蛇なの?ここはやっぱり狐じゃないの?」
「いいじゃん、清忠。狐の尻尾じゃ縛れないじゃん」
大人四人が口々に話すのを、僕と天清は、頷いて聞いていた。
「なぁ青藍、俺、陰陽師っていう人の力、初めて見た。すごいよな」
「うん、すごい。絶対にやり合いたくないよね」
身体の拘束が解けないとわかったのか、男が膝を着いて大人しく項垂れる。
男の周りを皆で取り囲むと、銀おじさんが、清忠さんに詰め寄った。
「清忠、おまえの兄貴に天狗の郷から話が行ってるだろう。何を手間取っているのだ。遅くないか?」
「俺に言われましてもですね、知りませんよ。そちらから話を聞いて、すぐに動いてましたけど?」
「ほう…、おまえ、誰にそんな口の聞き方をしてるんだ?」
「え?…え?あの…」
「銀ちゃん!妖狐族はちゃんと協力してくれてるんだから、そんな風に言っちゃダメだよっ。清、ごめんね?清は何も悪くないよ?」
「凛ちゃあん…っ」
清忠さんが、凛に抱きつこうとして、銀おじさんに顔を掴まれている。
いつも通りの三人の様子を見て笑っていると、微かな音に、僕だけが気づいた。
それは、男が何かを噛み砕いた音。
男が、一番近くにいた天清に向かって何かを口から飛ばした瞬間、僕の身体が勝手に動いて、天清の前に飛び出していた。
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