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飛び出すと同時に、男に向かって黒い羽根を投げつける。直後に左肩に激痛が走り、僕はその場に倒れ込んだ。
「青藍っ!?」と悲痛な声を上げて、天清が僕の身体を抱き上げる。
男が何かしたと気づいた天清が、僕を抱き寄せたまま、右掌を前に突き出して、火の玉を作った。
僕は、震える手で天清の右腕を掴むと、「ダメだよ…」と声を絞り出した。
「なっ、なんでだよっ!こいつが青藍に何かしたんだろっ!」
「…でも、天清には…誰も、傷つけて欲しくない…」
「だからと言って…っ!!」
「天清、落ち着け」
肩の痛みに耐えかねて、目を閉じた僕の耳に、銀おじさんの静かな声が聞こえてくる。
「もうこいつは何も出来ない。青藍が動きを封じた。こんな野蛮な奴でも、傷つけたらダメだと気を使ったのが悪かったな。それに、もう動けないだろうと油断してしまった。恐らく、退魔の呪がかかった物が、青藍の身体を傷つけたのだ。すぐに手当と治癒を始めなければならない。狐の神使!悪いが、また診てくれないか?」
僕がなんとか目を開けると、涙の膜でぼやける瞳に、険しい顔をした白様が映った。
「おまえ…、昨日の今日で、なぜ無茶をする。続けて呪を身体に受けたのだ。治癒はするが、どうなるか知らぬぞ。おい、天清とやら、青藍を本殿の中まで連れて来い」
「はっ、はいっ。お願いします…っ、青藍を助けて下さいっ!」
天清の必死な声が聞こえて、僕の身体が、フワリと抱き上げられた。
僕に振動が伝わらないように、天清が慎重に歩く。
本殿に入る直前に、男の様子が気になって顔を横に向けると、ぼやけてよくはわからなかったけど、鳥居の向こう側の長い階段から、数人の人影が現れたのが見えた。
「青藍っ!しっかりしろ…っ!」
力が入らずぐったりとした僕を覗き込んで、天清が涙を流している。
大きい身体をしてよく泣くなぁ…、でも綺麗な涙だよなぁ…と思って、天清に手を伸ばそうとした瞬間、肩に激痛が走り、僕は意識を失った。
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