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新たな烙印
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誰かの泣き声が聞こえる。こちらまで胸が詰まりそうな、とても悲しい声だ。一体どこから…。
声を探して暗闇の中を彷徨っていると、ぽわりと白く光る物を見つけた。近づくにつれて、泣き声がだんだんと大きくなる。そこには小さな男の子が、泣きながら座り込んでいた。
「どうしたの?迷ったの?」
僕が尋ねると、男の子が顔を上げて抱き着いてきた。
「ごめんねっ!僕が守りたかったのに、また怪我をさせちゃったっ。一番大切なあなたを、守れなかった…っ!」
どういうことだろう…と男の子の頭を撫でて、思わず笑みがこぼれた。
男の子には、頭に大きな茶色の耳と、お尻に同じく茶色の尻尾が生えている。
ああ…そうだ。この子は、幼い頃の天清だ。あの頃と同じ、丸い顔とふわふわの髪の毛。
僕は、とても愛しい気持ちになって、膝を着いて柔らかな身体を抱きしめた。
「ごめんね…」とまだ言い続ける天清の濡れた頬に、唇を押し当てる。
驚いて僕を見上げる真ん丸な目を見て、僕は思わず吹き出してしまう。そして、天清のふわふわの髪の毛を撫でながら「大丈夫だよ。僕は、君を守れて満足だ」と笑って言った。
鼻をすする音と、凛の「大丈夫だから」と言う優しい声が聞こえる。
ピクリと瞼を揺らして、ゆっくりと目を開ける。
すぐに、「「青藍?」」と呼ぶ天清と凛の声が飛んできた。
「青藍っ、気がついた?」
「青藍っ!俺のこと、わかる!?」
目の前に現れた二人の顔を見て、力無く笑う。
凛の優しい顔にはホッと安堵したけど、天清の目を真っ赤にして鼻水を垂らした顔には、なんて顔をしてるの…と可笑しくなった。
とりあえず、二人に小さく頷いたけど、すぐにまた瞼が重くなってきて、再び目を閉じる。
「え?青藍っ?青藍っ!」
「天清くん、ダメだよ。青藍はまだ体力が戻ってないんだよ。でも、一度気がついたからもう大丈夫だと思うよ。ほら、ゆっくりと休ませてあげよう」
「…はい」
きっと、ものすごく皆にも心配かけてるんだろうな、特に天清は、僕の傍から離れずにずっと泣いてるんだろうな、と少し申し訳なく思いながら、僕はまた深い眠りについた。
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