アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9
-
「頭を上げてください。あなたが悪いわけではないんですから…」
僕は戸惑いながら、天清と繋いでない方の手を前に出す。
谷田部さんは、ゆっくりと顔を上げて、困った顔をした。
「君は、本当に優しいね…。僕が舜を止めなければいけなかった。正しい方向へ導いてやらなければいけなかった。それが出来なかったのだから、やはり僕の責任でもあるよ…」
正座から足を崩して、谷田部さんがお茶を一口飲んだ。
「ああ…このお茶もとても美味しいね。…我々はね、退魔師と言っても、妖を消滅させる訳ではなく、力を弱らせて二度と人間を襲えないようにしてるんだ。人間を殺そうとするような妖は、さすがに滅してはいるけど…。出来るだけ、命は奪わないようにしている。そのことも、舜には散々言ってきた。なのにあの子は、君を殺すつもりで斬りつけた。あの子を放っておくと、また君や君の大事な人が襲われるかもしれない。だから、君が舜を始末したいと言うなら仕方がないと思う。でも、僕は命をかけて舜を守るから、その時は、舜の代わりに僕を殺してくれてもいい…」
「…谷田部さんの言いたいことはわかりました。でも僕は、誰も殺しません。たとえ僕が殺されても、誰にも舜さんも谷田部さんも殺させません。僕は、妖や人間が、種族関係なく仲良くしろとは言いませんが、共存出来る世界が作れたらいいと思っているんです。だから、二度と今言ったようなことは、口にしないで下さい」
ポカンと口を開けて僕を見ていた谷田部さんが、ふ…っと表情を和らげて、目を何度も瞬かせる。俯いて大きく息を吐くと、真っ直ぐに僕を見た。
「わかった。ありがとう青藍くん。舜も君の思いを聞いて、凝り固まった考えを変えてくれるといいんだけど…」
握られている手が引かれて天清を見ると、とても優しい目で僕を見ていた。僕だけにしか見せないその目を見て、『僕も好きだよ』の意味を込めて小さく頷く。
その時、「青藍」と銀おじさんに呼ばれて、僕は再び居住まいを正して前を向いた。
「それでいいのだな?おまえを襲った舜と言う奴のことは、谷田部さんに任せていいのだな?」
「はい。…彼の、辛い気持ちもわかるから。これ以上、彼の心を傷つけたくない」
「そうか。では谷田部さん、あなたの甥のことは、そちらで何とかしてもらいたい。我々、天狗族、妖狐族は人間に害を成す者は一人もいないと、よく納得させてくれ」
「もちろんです。最近は、本当に妖の被害がごく稀にしかないんです」
「なあそれより…」
それまで黙って聞いていた天清が、突然口を開いた。
「なんで宗忠おじさんが、谷田部さんを知ってたの?」
舜さんの話に気を取られて忘れていたけど、僕も気になって、宗忠さんの返事を待った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
121 / 207