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日中でも暗い道を、時おり鳴く鳥の声や風が葉っぱを揺らす音を聞きながら、一時間ほど歩いた。
一度足を止めて、皆で辺りの様子を伺う。僕も目を閉じて神経を集中させるけど、何も怪しいものは感じられない。
「同じような道が続くから結界でも張られてるかと思ったが、特に何も無いようだな」
「うん…。やっぱり、俺の記憶が違ってたのかも…」
「大丈夫だ、凛。違ってたら戻ればいいだけだ」
「銀ちゃん…」
項垂れた凛の頭を、銀おじさんがそっと抱き寄せる。そのまま見つめ合ってキスするんじゃないか…と二人を凝視していると、顔を上げた凛と目が合った。
「青藍、天清くん、疲れてない?ごめんね…。確か心隠さんが『空からはこの家はわからない』って言ってたから歩いて探すしかなくて…。それに、俺の記憶違いでこの辺じゃなかったかもしれない…」
「銀おじさんも言ったけど、大丈夫だよ。僕達は体力があるから。それよりも凛の方が心配だよ。疲れてない?」
「俺も大丈夫。じゃあ悪いけど、もう少し進んでみてもいい?この先に何も無かったら引き返そう」
「わかった」
僕が頷くと凛も頷いて、銀おじさんと手を繋ぎ直して再び歩き出した。
そして三十分程進んだ所で、いきなり開けた場所に出た。そこに入った途端に、凛が大きな声を出して駆け出した。
「あっ…。あった!ここだよっ、銀ちゃんっ!ほらっ、あの大きな木の奥に家があるだろっ?」
凛に手招きされて僕達も傍に行くと、凛が指差した先の大きな木の向こう側に、そこそこ立派な家が見えた。
興奮する凛の頭を撫でながら、銀おじさんが憮然と言う。
「ここか、あのムカつく鬼の根城は。やけに静かだが、あいつはいるのか?」
「銀ちゃん…、心隠さんのこと、まだ根に持ってるの?」
「当たり前だ」
「銀ちゃんて意外としつこい…」
「おまえに関してだけだ」
二人の会話を聞いて、僕はピンと来た。
きっと心隠という鬼は、凛のことが好きなんだ。だから銀おじさんは、あんなにも不機嫌な顔をしてるんだ。
ーーこのままその鬼に会って大丈夫なのかな。
そう不安に思いながら、僕は大きな木越しに家を見上げる。先程は気づかなかったけど、家の周りに漂う微かな不穏な空気を感じて、僕はブルリと身体を震わせた。
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