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先に走り出そうとする凛の手を引いて、銀おじさんが先頭に立って進む。
大きな木の横を通り過ぎて見た家は、屋根には枝や葉っぱが積もり、所々板の壁が剥がれている。広い庭も長い間手入れがされていないのか、雑草が伸び放題だ。
「…え?すごい荒れてる…。もしかして、もうここには住んでないのかな?」
凛が、家を見て不安な表情をする。
「確かに。あいつの気配が感じられない。どうやらいないみたいだぞ?」
鋭い目で辺りを見ていた銀おじさんが、静かに言う。
「せっかく家を見つけたのに…残念。久しぶりに心隠さんに会いたかったな…」
そう凛が呟いたその時、不穏な気配を感じて、僕と天清、銀おじさんが腰を低く落として身構えた。
「えっ?どうしたの?」
「凛、大丈夫だ。頼むから動くなよ」
銀おじさんが、凛を背後に隠して屋根を見上げて睨む。
僕も屋根を見上げて、さっき感じた不安は気のせいじゃなかったんだと、ゆっくりと息を吐き出した。
「上手く気配を隠していたようだな。おいっ!そこにいるのはわかっている!出て来いっ!」
銀おじさんが叫ぶと、すぐに屋根の上に人影が現れた。
艶やかな黒髪に綺麗な顔、白いシャツに黒いズボンの…女?
「しお…ん…さん?」
凛が、ポツリと呟く。
確認するように凛が口にした名前に、屋根の上の人が、よく通る声で答えた。
「…違う。心隠はここにはいない」
「よく似てる…。あ…でも青藍くらい若い?」
凛はそう呟くと、一歩前に出て大声を上げた。
「あっ、あのっ!俺は椹木と言います。昔、心隠さんに助けてもらって、この家でお世話になったんです。君は心隠さんによく似ている。もしや身内の方ですか?俺、心隠さんに会いたくて来たんですけど、心隠さんは今どこにいますかっ?」
屋根の上の人は、微動だにせず凛を見つめると、冷たく言い放った。
「知らない。どこにいるのか俺にもわからない。無駄足だったな。早く帰れ」
「そ、そんな…」
声を震わせて項垂れた凛の肩を、銀おじさんが抱き寄せた。
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