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隠れ鬼(藤隠side)
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天狗と妖狐、人間の四人が家の敷地から出るとすぐに、俺は周りに強固な結界を張った。
何十年と誰一人として訪ねて来る者がなかったこの家に、初めて来訪者が来て驚いた。
こんな山の奥深くにある家など誰も気づかないだろうと、この家を囲む山一帯の領域に結界すら張っていなかったのは失敗だった。
いつものようにアレの様子を見に呑気にやって来たら、家の前に天狗と妖狐がいるではないか。しかも、絶対にここまで来ることの出来ない人間までいる。
すぐに気配を気づかれた俺は、最悪は力づくで追い返してやろうと睨みつけていると、人間が心隠に助けられたことがあると言った。
ーーそう言えば、心隠からそんな話を聞いたことがある。
『とても可愛くて良い子だった。ずっと傍に置いておきたかったよ』
心隠が目を細めてそう言ったから、俺はてっきり女だと思い込んでいた。
ーーあいつ、男だった。しかも天狗が俺の嫁だとも言ってた。…心隠はその人間のことをずいぶんと熱く語っていたから、憎からず思っていたのだろう…。もしや、さきほどの天狗と取り合いをして負けたのか?
俺は家の裏手に回って置いていた籠を手に持ち、また玄関に戻って鍵を開け家の中に入った。そこここに張られた蜘蛛の糸を手で払いながら奥へと進む。廊下の突き当たりにある扉を押し開いて短い階段を降りる。途端にツンと匂ってくる酸っぱい匂いに顔をしかめながら、掌に青い鬼火を出して辺りを照らした。
階段を降りたすぐ目の前に、鉄の格子で閉ざされた部屋が浮かび上がる。
空気取りの小さな穴からしか光が入らない暗い部屋の真ん中で、くすんだ灰色の着物一枚を着て、腰まで伸びた髪で顔を隠した男が、まるで幽霊のようにゆらゆらと揺れながら立っていた。
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