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「もう二度とあんな思いをするのは嫌だ。本当に怖かった…」
「うん、ごめんね、天清」
藤隠が黙って僕達を見ながら、腕を組んで唸る。
「なに?どうしたの?」
「いや、そのおまえを襲ったっていう人間は、今どうしてるんだ?」
「おまえじゃなくて青藍だから。その人の親戚の人が、暴走しないように見てくれているよ。十五年前の話も、その親戚の人から聞いた」
「心隠のことを知ってたのか?」
「いや、心隠さんのことは、蛇の妖から聞いたんだ」
「蛇?おまえ…じゃなくて青藍、妖狐だけじゃなく蛇とも仲が良いのか?」
「仲が良いっていうか…学校の先生なんだよ。天狗族と妖狐族だけじゃ情報が足りなかったから、調べてもらったんだ」
「ふ~ん…」
興味が無さそうに返事をして、藤隠が廊下の端にある地下へと続く扉を見る。
凛がその視線を追いかけて、扉を見ながら立ち上がった。
「藤隠くん…、帰る前にもう一度、心隠さんに会えないかな?」
「はあっ!?」
藤隠が勢いよく振り向き、怖い顔で大声を上げた。
「あんた、バカじゃねぇの?ついさっきあいつに喰われかけただろうがっ。今度こそ、本当に喰われるぞっ!それに、もう手遅れかもしれないけど、心隠がもっとおかしくなってしまう。だから会わせれるわけないだろうっ。もう帰れ。あんたの旦那が心配するぞ」
「そ、うか…そうだよね。わかった、今日は帰るよ。でも、このままにはしておけない。日を置いてまた来る。俺は、心隠さんがちゃんと話が出来るようになると信じてる。賢くて強い鬼だったんだ…」
「もう来るな。と言ってもまた勝手に結界を抜けて来るんだろ?次来るなら覚悟して来いよ。俺は、どうなっても知らないからな」
「わかってるよ。ありがとう、藤隠くん」
「礼を言われる筋合いはない。早く行け。青藍と狐、おまえらもだ」
「狐じゃねえ!天清だっ!」
天清が、怒りに任せて勢いよく立ち上がる。藤隠を睨みながら僕の腕をそっと引き上げて立たせ、僕の背中を押して廊下に出た。
「じゃあ藤隠くん、お邪魔しました。騒がしくてごめんね」
「近道の道を開いてやる。時間を短縮して帰れる」
「ふふ、そんなことまでしてくれるんだ?ありがとう」
「ちげぇよ!早くここから離れて欲しいだけだっ!」
凛にお礼を言われて、藤隠が顔を赤くしながら悪態をつく。
口は悪いし態度も悪いけど、やっぱり良い奴なのかも、と内心思いながら、僕は天清に背中を押されながら外に出た。
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