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藤隠が言った通り、帰りは行きの半分ほどの時間で、神社の裏側まで戻って来れた。
家に着くとお昼をかなり過ぎていた。
帰りの山道で「腹が減った」と何度も繰り返していた天清と僕の為に、凛が宅配のピザを注文してくれた。
ピザが来るまでの間に、再度凛の腕の手当をした。
傷口を丁寧に水で洗い、もう一度たっぷりと軟膏を塗って、その上からガーゼを貼った。
「これは大げさじゃない?」と凛が苦笑しながら言ったけど、こうする方が治りが早い。
凛の腕の傷は、藤隠の家での手当で、ほとんど塞がっていた。だけどまだポコリと赤く盛り上がっていたので、僕がじっくりと軟膏を塗り込み、より成分が染み込むようにガーゼを貼ったのだ。
傷は治るからいいけど、血を吸われたからかよく知る心隠さんに噛みつかれたことがショックだったからか分からないけど、凛の頭痛と目眩が止まらないみたいだった。
帰り道は、僕と天清がふらつく凛を両側から支えて、何とか家まで戻った。
でも、腕の手当が終わると、凛は「少し休むね」と言って、玄関横の銀おじさんと凛の部屋にこもってしまった。
ピザが来て、凛から受け取っていたお金を支払う。僕は天清に皿を出すように頼んで、凛の部屋の襖を少し開けて様子を伺った。
「凛…、どう?まだ辛い?ピザが来たんだけど、少しでも食べる?」
「ありがとう…。俺はいいから二人で食べて。さっき薬を飲んだからマシになってきたよ。でももう少し休んでるよ。天清くんに、俺のことは気にしないで何時までいてもいいし、帰る時も挨拶しなくてもいいと言っててくれる?」
「わかった…。何かあったらすぐに呼んでね。我慢しないでよ?」
「うん、わかった。今度はちゃんと青藍を頼るよ」
「言ったね?約束だからね!」
腕で顔を隠していた凛が、顔を出して僕を見ながら力無く笑う。その辛そうな泣きそうな顔に僕は胸を痛めながら、静かに襖を閉めて居間に戻った。
ーー僕が説明しなくても、あの顔を見れば銀おじさんは何かあったと気づくだろうな。銀おじさんはとても鋭いから、心隠さんの家に行ったことも見抜くだろう。凛を問い詰めたりはしないだろうけど、凛を心配して辛い顔をする。それを凛が申し訳なく思って、凛も悲しい顔をするんだ。お互いを思い遣り過ぎるのも、心が痛いものなんだなぁ…。
ぼんやりとそんなことを考えながら戻って来た僕を、天清が心配そうな顔で見ていた。
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