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舜くんが僕から目を逸らせながら、渋々口を開く。
「わ、悪かったな。いきなり襲って。…その、もう大丈夫か?」
「大丈夫だよ。今は元気だし、気にしなくてもいいよ」
「一ノ瀬さんは、優しいね。舜のこと、これっぽっちも恨んだりしないんだね。舜も、恨みを忘れろとは言わないけど、そろそろ前に進もうな?」
「ち…、うるせぇ」
谷田部さんに諭されて、せっかくしおらしかった舜くんの態度が、荒くなる。
僕は、舜くんがこのまま親を殺された恨みの呪縛から解放されればいいのにと願って、「また遊びに来てね」と手を振った。
「どーしても暇になったら来てやる。というか、俺、あの神社にいたあいつに会ってみたい」
「神社?あ、倉橋さんのことかな?そうだね。あの人、すごい術者みたいだし、いろいろ話を聞くといいと思うよ」
「おまえ、上からものを言うんじゃねぇ…あたっ!」
「舜!一ノ瀬さんに失礼な言い方をするんじゃない。…たく、じゃあ一ノ瀬さん、これで失礼するよ。今日は、椹木さんや、あの大きい天狗の方はお留守なんだね?またいらっしゃる時にお伺いさせてもらうよ」
「はい。じゃあね、舜くん」
手を振る僕を見て、舜くんが渋い顔をする。それでも、小さく手を挙げて出て行った舜くんに笑っていると、舜くんが、血相を変えて戻って来た。
「ど、どうしたの?」
谷田部さんが、「舜!帰るぞっ」と呼んで腕を強く引く。
でも舜くんは、はあはあと肩を上下させて、とても荒い呼吸を繰り返しながら玄関から動かない。そして、真っ青な顔で震えた声を出した。
「あいつ…」
「え?」
「あいつ!さっき奥に入って行ったあいつ!おまえが、ここの主の知り合いだとか言ったあいつ!…片腕が、無かった」
「…それが、どうかしたの?」
「俺の父親を死に至らしめた鬼も、片腕が無い。さっきのあいつは…父さんと戦った鬼なんじゃないのか」
僕は、返事が出来なかった。
「違う」と一言言えばいい。でも、舜くんに嘘はつけない。でも、心隠さんも助けたい。
矛盾する考えに動けないでいると、「邪魔するぜ」と舜くんが玄関を上がって奥に進もうとした。
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