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藤隠は、一度袖で目を擦ると、湿った声で話し出した。
「二日前のあの日、すぐ家に戻ったんだ。心隠の目の手当をして着替えさせて、『家から出ないと約束するなら、座敷にいてもいい』と俺は言ったんだ。でも心隠は、『俺は座敷で過ごせる身ではない』と言って、また地下牢に戻ってしまった。しばらく、地下牢で話をした。心隠は、とても上機嫌だった。『狂った鬼となった俺が、正気に戻れて大きくなった藤隠を見れた。久しぶりに凛にも会えた。こんなことを感じる資格もないが、とても幸せだ』そう笑って言ったんだ…」
また涙が溢れてきたのか、再び袖で目を拭って鼻水をすする。
「俺が、『一生あんたの面倒を見るから、生きててくれよ』と言うと、あいつは『わかったよ』って…っ!そう言ったのにっ!…もう夜も遅くなって泊まろうとしたら、心隠に『帰れ』って言われた。『一人でこれからのことを考えたい』って言うから、明日来ると言って地下牢を出た。廊下へ出る扉が閉まる瞬間、『ありがとう、藤隠』って聞こえた。俺は心隠の家を出て少し進んで、足を止めた。扉が閉まる間際の心隠の声が、おかしいと思ったからだ。急いで引き返して家の中に飛び込むと、ますます俺の中の不安が大きくなった。俺は心隠の名前を叫びながら走って、地下牢への扉を開けた。その瞬間、濃い血の匂いがして…、牢の中で心隠が倒れていた」
凛が、カタカタと震えながら銀おじさんの服を掴む。
銀おじさんは、凛の肩を抱き寄せて、優しく背中を撫でた。
「俺は、心隠が寝てるんだと思い込もうとした。血の匂いも、目の傷がまた出血したんだと思って…。牢の中に入って、呼びかけても身体を揺すっても、心隠はピクリとも動かない。大きく揺すると横を向いていた身体が仰向けになって、俺の持つ鬼火の明かりの中で、着物の胸の辺りを真っ赤に染めた心隠の姿が、浮かび上がった…っ」
そこまで話して、藤隠は両手で顔を覆った。
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