アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
檻の中の鬼 4
-
唯一残った右目も潰れて光を失った俺は、藤隠に支えてもらって家に戻った。
座敷に寝かされ、藤隠に目の手当をしてもらう。
手当など必要ないのに…と思ったが、あえて口に出さずに藤隠がするがままに任せた。
俺は、あの人間に命をくれてやろうと思っていたのに。
藤隠が、俺から離れずに傍にいてくれた。この世でたった一人愛した凛とも久しぶりに会えた。 悪鬼の俺には、過分の幸せだ。
だから、もういいのだ。この幸せな気持ちを抱いて、俺の命を終わらせたい。
手当を終えると、藤隠が座敷にいろと言ったが、地下牢へ戻った。早く命を終わらせるつもりが、藤隠といつまでも話していたくて引き止めてしまった。名残惜しいが、これ以上引き止めると決意が揺らぐ。もう少しと欲が出てしまう。
そんなことは、許されないのだ。
だから、俺は、泊まるという藤隠を帰した。
藤隠が家を出た気配を感じると、着物の襟を整えて正座をし、大きく息を吐き出すと同時に、右手を胸に突き立てた。
「ぐっ…!うっ…」
とてつもない痛みに思わず声が漏れる。
だが、俺に喰われた人間の方が、もっと苦痛だったはずだ。
俺は、更に手をめり込ませて背中側へと貫通させると、一気に引き抜いた。
口から血を吐き出して、ゆっくりと倒れる。
自分の鼓動がだんだんと弱くなっていくのを感じていると、誰かに身体を揺すられた。
ーーバカだな…、なぜ戻って来た…藤隠…。
一人で寂しく消えるつもりだったのに、藤隠が傍にいてくれる。
藤隠、おまえは、俺や流隠の分も、幸せになってくれ。
凛と銀色の天狗のように、唯一無二の愛する人を見つけて。
そして、俺の意識が暗闇に消えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
185 / 207