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「心隠さんって、なんか可哀想だよな…」
広い和室の黒檀の机の前に座って、天清がポツリと言う。
「でもまあ、幸せかそうでないかは当人が決めることやからね。その心隠さんが『幸せだ』と最後に言ったそうやし、そんなに心痛めんでもいいと思うで?」
僕と並んで座る天清の、机を挟んで反対側に座る倉橋さんが、微笑みながら言う。
僕は、凛を抱きしめていた時の、心隠さんの穏やかな顔を思い出して、倉橋さんに頷いた。
「しかし、まさか十五年前の人喰い鬼が椹木の知り合いの鬼で、そんな結末になってたなんてなぁ。椹木はどうなん?もう大丈夫?」
「はい。先週はずっと塞ぎ込んでましたけど、今週からは仕事に行ってます」
「そうか…。まあ、一ノ瀬さんが傍にいてはるからな、安心や」
「はい…」
心隠さんが死んだと藤隠が知らせに来たのが、先週の半ばだ。先週末まで、凛は会社を休んで塞ぎ込んでいたけど、銀おじさんのおかげで徐々に元気を取り戻して、月曜日の今日から銀おじさんと一緒に仕事に行った。
先週の間に、銀おじさんが、天狗族にも妖狐族にも事の顛末を説明して全て解決した。
そして今日、僕と天清は、学校帰りに倉橋神社に来て、倉橋さんに説明をした。
谷田部さんと舜くんにも連絡をして、この後ここに来ることになっている。
「その藤隠くんって子はどうしてるん?」
倉橋さんが、お茶を一口飲んで聞く。
「藤隠は、かなり寂しいみたいで、二日置きに僕の家に来ます。凛と心隠さんのことを話すことで、落ち着くみたいです」
「うんうん、それで二人共心が安らぐなら良かったな。で、天清くんはなんでそんな顔してるん?」
天清が、下唇を突き出して眉間に皺を寄せている。
僕は、小さく息を吐いてお茶を飲んだ。
「だってさ、あいつ、青藍に会いに来てそのまま泊まっていくんだぜ?しかも青藍の部屋に!俺だって泊まりたいのにっ!」
「ああ…、そういうこと」
倉橋さんが、ふふっと笑った。
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