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平穏な未来へ
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悲しい出来事があった夏が終わり、暑さが引いたと思ったら一気に風が冷たくなって、あっという間に秋が過ぎていた。
つい最近まで、まだまだ心隠さんのことで落ち込んで食欲も元気も無かった凛だけど、僕の大学推薦の合格通知が届いてからは、やっと明るい凛に戻った。
天清は、僕が合格したことを告げると、自分のことのように喜んで、「青藍はやっぱり天才だ!」とベタ褒めだった。そして今から「同じ大学に行く為に勉強する!」と張り切っていたけど、天清はきっと大丈夫だろう。
いつも頼りなく見えるけど、何でも器用にこなしてしまうから。僕は、天清は僕よりも優れていると密かに尊敬している。
合格通知が届いた週の土曜日に、郷に戻った。
両親に報告する為だ。
郷には、夏に受験のことを相談する為に一度戻って以来だ。
迎えに来た浅葱と共に僕が実家の庭に降り立つと、愛犬の紺が勢いよく飛びついてきた。
「わあっ!びっくりしたぁ。紺!元気だった?あんまり帰って来なくてごめんね」
しゃがんだ僕の周りを走り回る紺を見て、浅葱が笑う。
「紺ももうおじいちゃんですからね。最近ではボーッとしてることが多かったんですが、青藍様を見たら一気に元気になっちゃいましたね」
「そうなの?紺…、いつまでも元気でいてね?」
僕が紺の頭を撫でると、紺は大きく「わんっ!」と吠えた。
「青藍、おかえりなさい。あら?少し背が伸びた?」
「母さん、ただいま。…伸びて欲しいけど伸びてないよ…」
縁側から降りてきた母さんが、立ち上がった僕を見て言う。
凛は僕と変わらない身長だけど、銀おじさんや天清、藤隠や舜くん、皆背が高くて羨ましいと思ってるんだ。
母さんは、僕の肩に手を置いて、「そう。わたしが背が低いから、わたしに似ちゃったのね…ごめんなさいね」と眉尻を下げた。
「紫様、大丈夫ですよ。その代わり青藍様は紫様に似て綺麗な顔をしてますから。力の強さは鉄様譲りですし。その上とてもお優しい。郷の者は皆、青藍様を慕ってます!」
「ありがとう、浅葱。あなた、所帯を持ってから言動がずいぶんと大人になったわね」
「いやぁ、俺ももうアラフォーですから」
頭をかきながら照れ笑いを浮かべる浅葱を見て、僕は『アラフォーなのに凛と比べてまだまだ幼稚な気がするけど』と心の中で思った。
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