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夕食までに時間があるので、久しぶりに郷の中を歩くことにした。
織部が着いてくると言ったけど、一人でゆっくりと歩きたかったから断った。
でも、堅物な織部は、きっとこっそりと着いてきてるに違いない。
ーー織部と浅葱を足して二で割ったらちょうどいいのに。
ふとそんなことを思った自分がおかしくて、一人で笑っていると、声をかけられた。
「何にやにやしてんだよ、青藍。帰ってたのか?」
「あっ、柚葉。柚葉も帰ってたの?」
柚葉も僕と同じ大学の推薦を受験していたけど、確か落ちたはずだ。
僕が黙って柚葉を見ていると、柚葉が慌て出した。
「あっ、俺に気を使うなよな?一般で頑張るし、最悪青藍と違う大学になっても、青藍の右腕になるべく頑張るよ、俺は…」
「うん、期待してるよ。だから頑張ってね」
「もちろん!あっ、ちゃんと言ってなかったな。青藍、おめでとう!もしかしてそれの報告に帰ってたのか?」
「ありがとう。ふふ、そうなんだ。僕は今日泊まるんだけど柚葉は?」
「そっかー。俺はもうすぐ帰るよ。明日桃花(ももか)と出かけるんだ」
「相変わらず仲良いね。桃花ちゃんは大学決まったんだっけ?」
「そうなんだ。桃花は『私と遊ばずに勉強しろ』って言うんだけどさ、俺も息抜きしたいじゃん?桃花に会うと元気出るしさ…」
「桃花ちゃん、しっかりしてるもんね。明日目一杯楽しんで、明後日から頑張りなよ」
「そうする!じゃあまたな、青藍」
用事を頼まれていたのか、大きな風呂敷を抱えて、柚葉が家の方へ走って行った。
その後ろ姿を見送って、僕は細い川沿いの道をゆっくりと歩く。
桃花ちゃんは、柚葉の恋人だ。
付き合って一年になる。同じ学校の、とてもしっかりした綺麗な女の子で、柚葉が天狗だっていうことも知っている。
柚葉が少し頼りないので、桃花ちゃんは柚葉のことを放っておけないらしい。
そして、僕と天清が付き合っていることも知っていて、密かに応援してくれているのだ。
危ない出来事には、決して彼女を巻き込まない為に、夏に僕が襲われたことや心隠さんのことは、柚葉に口酸っぱく首を挟まないようにと注意していた。
二人はとてもお似合いだと思う。
ずっと仲良くいてもらいたいな。
僕は、少し天清に会いたくなって、空を見上げた。
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