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新しい会社
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3月末、周平達は慌ただしく引っ越しの準備をし、4月からは、それまでの雑居ビルを離れ、比べ物にならないほどきれいな高層ビルのオフィスに移った。
結局、15人ほどが、起業した佐藤の元へと去っていった。
そのほとんどが、優秀な先輩社員達だった。
売却先の会社へ移籍した周平達は、オリエンテーションのため会議室に集められ、会社の事務的な話の後、新しい部長、蔭山から部についての説明があった。
ほぼ全員が当面、1つのグループで、今までの業務を継続していくということだった。
解散を告げられ、部屋に戻ろうとしたところで、周平は蔭山に呼び止められた。
そこで、「ほぼ全員」に自分が含まれていないことを知った。
心配そうに振り返る安田と入れ違いに入ってきた男を見ると、蔭山が「木佐、こっちだ」と声をかけた。
木佐と呼ばれた男は、30前後といったところだろうか。
細く神経質そうな顔で、何も言わずに蔭山の隣に座った。
「彼が大本。お前のグループに配属になった」
蔭山がそう周平を紹介したので、周平は「よろしくお願いします」と頭を下げた。
木佐は周平を見ずに、黙ったまま小さく会釈した。
その後、蔭山から彼らのグループ、「共通技術グループ」の役割が説明された。
決まったユーザーを担当するのではなく、社内の各チームの技術的な相談に乗ったり、支援を行ったりする。
「具体的にどんなことをするのかは、こいつに聞いてくれ。
じゃあ、後はよろしく」
そう言うと、蔭山は二人を残して出て行った。
周平は、木佐の顔を見た。
みんなの相談に乗れるほど、自分に技術力があるとは到底思えなかったので、そんな不安を持っていることを伝えた方がいいのではないかと考えていた。
「蔭山さんはああ言ってたけど、要は、炎上してる現場に乗り込んで、なるべく早く火消しするってことだ」
木佐がそう言って、周平を見た。
「炎上する前に相談してくれたらいいんだけど、相談が必要なヤツほど、バカだからそうしない」
周平は、なんと返したらいいのかわからなかったので、別の質問をした。
「グループは何人なんですか」
「俺とお前の二人だ。
二人で全国を飛び回る」
「二人しかいないんですか」
「二人もだ!
今までは俺一人だった」
「自分は2年目なんですけど、できるものなんでしょうか」
二人だけのグループと聞き、なんとなく、メインから外されてしまったような、焦りや寂しさを感じた。
「できなかったら、他のヤツと変えてもらう。
今なら、すぐに代わりを入れてもらえそうだし」
人を見下したような木佐の笑みを見て、さっきまでの不安を棚に上げて、周平は他のヤツに変えられてたまるかと、グッとお腹に力を入れた。
「頑張ります」
木佐はあまり期待していないように「まぁ、がんばれ」と軽く応えると、立ち上がった。
「早速だけど、今から出るぞ。
今度の土曜にデータ移行テストなのに、移行プログラムができてないらしい。
おまえが土曜までに作れ。腕試しだ」
「土曜までって、今は水曜の午後ですけど。
一人でできる作業量なんですか」
「わからん。
とりあえず、行ってみる」
「はい」
周平も立ち上がり、木佐の後を追った。
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