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目には目を、歯には歯を 2 ー清四郎ー
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「まず、東藤グループのご令嬢である玲奈さんとのことですが、噂にあるようなことは一切ございません。」
俺は、わざわざ本人の名前を出して否定した。
これはここにいるであろう例の記者を牽制するためでもあるが、この報道を見たすべての人に訴えたかったからだ。
俺が大切にしたい相手は他にいることを。
「相手の東藤玲奈さんは、楠社長との関係を認めているようですが??」
「そのような事実は一切ございません。
私は………いや、俺には、たった一人の愛している人がいるので。」
ふざけんなっての。
何もねぇーよ、あんな女と。
「玲奈さんはあなたのご自宅に招かれたとか。」
「招いたことは一度もありません。
もともと、東藤グループとは仕事上のパートナーとして近々契約を成立させるはずでした。
玲奈さんは東藤社長の付き添いでこられてから、用もないのに会社に来るようになり、私が体調を崩し家にいると、どこから聞いたのか住所を調べ、押し掛けてきたんです。
その際に、私の最愛の人や同僚を侮辱されました。
彼女の呆れるほどの態度と根拠のない虚偽をいろいろな所で話されることに関しては、非常に腹立たしく思っております。
契約の方も検討し直すことに決定いたしました。」
「玲奈さんの一人芝居だと??」
「ええ。」
会場はさらにざわめいた。
大手グループの令嬢が表だっていることが余計に世間を賑やかせているのだ。
「では、あの写真は??」
声がする方を見れば、あの記者だった。
「あなたは…京経スポーツの浅田満さんですよね??」
「え、なんで……。」
「この写真、撮ったのあなたですよね??
しかも、場所は東藤グループの本社ビルだ。
なんで、こんなビルから写真がとれたんですかね??
東藤グループと何か関係があるんですかね??」
「そ、それは……。」
「どういうことだ??
楠社長と噂があった令嬢の父親の会社が、写真の撮影場所??」
「京経スポーツのスポンサーは違うだろ??」
「ヤラセかよ。」
俺の発言に、他の記者たちが次々に疑問をその記者にぶつけていく。
瞬く間に、浅田の顔が青ざめていくのがわかった。
「浅田さん、あなたのこと少し調べさせて頂きましたよ。
なんで東藤グループ本社から撮影出来たのか…それは、玲奈さんと関係があるからじゃないですか??
これは一昨日の写真です。
あるバーであなたが玲奈さんと飲んでいるとき、肩や腰に手を回したり、玲奈さんがあなたの腕に抱きついたりしてますね。」
会場のプロジェクターに写し出されたのは、浅田とあのくそ女の密会現場写真。
撮影したのはアキで、会話の内容も聞き取れたといっていた。
「これを見る限りでは、玲奈さんと交際しているのはあなたじゃないですか。」
「ち、違うこれは………。」
「違う??
このあと二人はホテルに入ってるじゃないですか。
なのに違うんですか??」
俺はさらに追い討ちをかけていく。
次々に写し出される写真にはしっかりと二人がホテルに入るところが写っていた。
浅田だけではない、あのくそ女にも追い討ちをかけていることになる。
もちろん、東藤グループにも。
俺を敵に回したことを本気で後悔させてやる…。
「待って、これはどういうことなの清四郎様っ!?」
浅田を追い詰めていると、会場に女の声が響いた。
声の主はもちろん、東藤玲奈。
「東藤グループの令嬢じゃないかっ!?」
記者は一斉にクソ女に向かってシャッターを切り始める。
だが、女は怯みもしない。
俺の方へとヒールの音をならしながらステージへと上がってきた。
「どういうことなのっ!?
清四郎様、この記者会見は!?」
「玲奈さん、あんたが俺を敵に回したのが悪いんだ。」
「なんですって??
私が何をしたっていうのよっ。」
「俺の大切な人を、汚ねぇ連中使って襲ったろ。
俺が逮捕された時には刑事をたらしこんで相当やってくれたしな。」
「それは、アイツが清四郎様から離れないからっ…」
「アイツが離れねぇんじゃねぇっ、俺が離さねぇんだよ。」
久々に声を荒げた俺に会場が静まり返る。
クソ女は涙目になり俺をにらみあげた。
「……っ…そもそも、私っていう証拠がどこにあんのよっ!!!」
「あるんだよ。」
ニヤリと笑ったのは俺ではなく和也だった。
それまで黙っていた和也は、待っていたと言わんばかりに席をたちマイクを手にした。
「皆さん、この映像をご覧ください。
これは楠社長の自宅マンションの防犯カメラです。
ここに映っている男二人が暴行と恐喝をしてきた人物です。
調べましたら、お二人とも玲奈さんの同級生で暴力団の構成員だそうですね。
貴女が指示したとそう言っていましたよ。」
「そ、んな……。」
クソ女はバツが悪そうに顔を歪めた。
「僕からもちょっといいかな。」
次に声を発したのは、なんと橋本さんだった。
橋本さんに記者会見に出席してほしいとは言っていない。
出席してほしいのは山々だが、橋本さんほどの有名人がこんなチープな場所に来て俺や秀のためにわざわざ手間をかけさせる訳にはいかなかったからだ。
「あれ、橋本財閥の橋本会長じゃないか??」
「何で橋本会長が楠社長と??」
会場がざわつくのも仕方ない。
普段は表舞台に決して立たない橋本さんが、記者会見に出てきたのだから。
「こんにちは、橋本です。
楠君とは10年来の友人でね、彼が逮捕されたって聞いてびっくりしたよ。
でも、彼が理由もなく暴力を振るう男ではないことくらい知っているからね、僕なりにいろいろ調べましたら面白いことがわかってね。」
「橋本会長、面白いこととは??」
一人の記者が橋本さんに投げ掛けると、橋本はマイクを持って笑いかけた。
「まず、この動画を見てもらおう。」
そう言ってプロジェクターに流されたのは、俺が警察で暴行を受けているときの映画だった。
あのとき執事の彰吾さんから渡されたカフスがまさかカメラとマイク内蔵だったとは、刑事たちも知らなかっただろう。
「なんだこれ、刑事か??」
「この警察、酷すぎるわ。」
「これは楠君が逮捕された時に持たせたカフス型のカメラが撮ったものでね、楠君が必要以上の取り調べを受けていることはすぐにわかるだろう。
彼はその時に肋を折るほどの大ケガをしてしまっている。」
橋本さんには怪我のことは言っていないはずだが…どうやらばれていたようだ。
そして記者たちはその酷な映像から目を離せないでいた。
「このときの刑事たちがまた面白くてね。」
橋本さんは怖いくらい穏やかな顔でいった。
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