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TDL 2 ー秀ー
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いざ、夢の国へ!!!
アキさんが俺たちのためにチケットをくれた。
それは子供のときからテレビや雑誌でしか見たことのなかった、夢の国。
親戚にたらい回しにされてた頃、俺だけ置いてかれて帰ってきた皆は楽しそうに笑いながら買ってきたお土産を広げてた。
もちろん俺のものなんて何もなかったけど、キャラクターの描かれた缶や箱に入ったお菓子を見るだけでも、そこがおとぎ話のような世界なんだと子供ながらに理解した。
『迷惑をかける悪い子は連れていけないの。
反省して、掃除と洗濯でもして黙って待ってなさい。』
叔母にそう言われていた。
自分は悪い子。
だから、連れていってもらえない。
自分に何度も言い聞かせてたあの頃、本当に辛かった…。
「秀…??」
家を出て車のなか、先ほど寄ったコンビニで軽い朝食を買った。
朝から甘いモノと清四郎に笑われながら買ってもらったクリームパンを握ったまま、固まった俺を心配そうに気にする清四郎。
「え、あ……。」
「どうした。」
「いや、ちょっと………昔のこと思い出しただけ。」
これだけ言えば清四郎はわかってくれる。
俺の手をそっととって、運転に支障がでない程度にそのまま手を握っていてくれた。
「もう大丈夫(笑)
あの頃の環境とは全然違うもん。
ずっと行きたいって、憧れてたから…嬉しくてさ(笑)」
「楽しみにしとけ。
それと、早くそのパン食っちまえ。」
ポンポンって前を見据えたまま、手だけが頭を優しく撫でた。
それで十分安心できるし、元気が出る。
「うん(笑)」
せっかくアキさんがくれたチャンスだから、目一杯楽しまなくちゃ。
「着いた。」
「え。」
見渡す限り人、人、人、人、人、人!!!!!
車を降りて立体駐車場を出ると、ぞろぞろと同じ方向に向かっていく人の山が。
平日ど真ん中の水曜日だろ!?
信じられないほどの人!!!!
「おい、行くぞ。」
あっけにとられる俺の手を握って引っ張っていく清四郎にただ付いていくしかなかった。
荷物検査を抜けていくと長蛇というか、凄まじい人の列が目に入る。
入場ゲートを潜るだけでも一苦労だ。
「すごい人。」
「アホ、今日はまだマシな方だぞきっと。
すごい時なんかパーク入るのに2~3時間かかるからな。」
「清四郎は前にも来たことあるの??」
「まぁ、な。」
ちょっと難しい顔をしたのは、きっと俺に遠慮してだと思う。
でも、清四郎がパークのことを詳しく知ってる理由を俺は知ってる。
ここ数日、俺に隠れていろいろ調べてたの知ってる。
アキさんにお勧めスポット聞いたり、スマホで調べたり、雑誌で読んだり………。
俺のために入念に調べてくれてること、和也さんがこっそり教えてくれた(笑)
『アイツ、秀君に心から楽しんでほしくて頑張ってるから、たくさん甘えてあげな(笑)』
って、和也さんからメールが来た。
優しい清四郎。
和也さんとアキさんからしたら、パークについて必死に調べてる清四郎が面白かったらしいけど、それを想像すると俺でも笑っちゃう。
けど、それよりも嬉しいが勝つ。
ありがと。
今は恥ずかしいけど、帰りに絶対言うって決めてる。
「すっげぇーーーーー!!!」
一度ゲートをくぐればそこは日本じゃなかった。
英語で書かれた色とりどりの看板とショーウィンドウにはたくさんの商品とキャラクターが並ぶアーケード。
音楽隊が聞き覚えのある曲を演奏して、ワゴンには風船やぬいぐるみやら被り物が並んでる。
見たことがあるものや初めて見るもの、音楽にキャストと呼ばれる人たちの呼び込みの声。
テンションと体温が一気に上がっていくのがわかった。
「とりあえず、パスだけ1つとるか。
さっき言ってたのでいいんだな??」
「うんっ!!!」
入場待ちの間、スマホで一通りのアトラクションを見た俺は生まれてこの方、ジェットコースターに乗ったことがないためそこばかりに釘付けだった。
清四郎と話した結果、一番混みそうなジェットコースターのパスを取ってから、一番奥にある急降下が少ないらしいジェットコースターから乗ることになった。
「お前初めてなのに、ジェットコースター攻めって(笑)」
清四郎は俺の手を引きながら、迷うことなく進んでいく。
「だってー、楽しそうじゃん(笑)」
「途中でビビるなよ??」
「ビビらない!!!」
「うわああああああああああああああああ!!!」
「平気か??」
「喉痛い………。」
「あれだけ叫べばな(笑)」
「でも、楽しい!!!
ちょっと途中で落ちるところ、股間がきゅんってしてビックリしたけど(笑)」
「タマヒュンかよ(笑)」
生まれて初めてのジェットコースターはなんとかクリアした。
思ってたより落ちなかったけど、なんたって振り落とされそうなほどのスピードでひたすら山を下ってくのはスリル満点だった。
「次の時間までしばらく空くから、適当に回るか。
どこがいい??」
「ぜんぶ!!!」
「アホ、わかってる。」
「てへ(笑)」
「あんま、可愛い顔すんな。
襲いたくなるから。」
「ちょっ………ばっ////」
「(笑)」
ニッと笑う清四郎がすっごくかっこよくて、カァーッと顔が熱くなるのを感じた。
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