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TDL 5 ー清四郎ー
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「スッゴい、あれ、どーなってんの!?」
「…。」
「わー、すっげぇ。」
「…。」
「うわぁっ、びっくりしたぁー。」
「…。」
さっきから秀は乗り物から身を乗り出して幽霊マンションを楽しんでいる様子。
絵が浮き出たり、石像と目があったり、幽霊がダンスを踊ったり…いちいちリアクションが面白い。
最後、鏡に映った俺たちの間に幽霊が映し出されたときには肩を組んで見せるようなポーズまでとる始末。
ホント、子供のように無邪気にはしゃいでいる。
「あー楽しかった!!!」
「怖くなかったろ??」
「うん(笑)」
出口に向かって歩いていく。
すると後ろの方から聞き覚えのある声がした。
「おい、見ろよあれ、さっきの(笑)」
「うけるわー(笑)
暗いからお互いのチンコしこってたりして(笑)」
「ああっ!!
イクっ!!!なんちゃってー??(笑)」
「あるいはケツに突っ込んだとか!?(笑)」
「あーまじホントきめぇわ(笑)」
「…………おい、ガキ。」
「うわっ!?
んだよっ!!!!」
「ちょ、清四郎っ!!!」
軽く頭の中で何かがキレる音がした直後に、体が勝手に相手の一人の胸ぐらを掴んでいた。
慌てて秀が間に入ろうとするが、ここは譲れなかった。
彼女であろう女の子二人も少々怯えているように見える。
相手の男が顔を青ざめるくらいだ、俺の顔は相当な形相をして自分より身長の低い相手を見据えていたのだろう。
「俺らはな好きになった相手がたまたま男だっただけだ。
お前らだって好きな奴連れて、こうやってデートしたり飯食ったりすんだろーが。
俺らだってすんだよ。
つまんねぇーことこいてんじゃねぇよ、クソガキが。」
「……あ、の……。」
「清四郎、いいって。
行こうよ。」
「すみませんっ。
彼氏たちが失礼なこと言って、本当にごめんなさい………っ。」
男二人より早く女の子二人が俺たちに頭を下げてきた。
それが余計に腹立って、更に相手を睨み付ける。
「テメェの女にテメェのケツ拭かせてんじゃねぇよ、あ??」
「す、すみませんでした。」
「謝るぐれぇなら、はなっから余計な口利くんじゃねぇよ。」
「はい……。」
やっとガキらが詫びれるのを見て手を離し解放してやると、さっと後退りを始めた。
今さら何をする気もないが、とりあえずガンだけは飛ばしておく。
そんな俺に女の子たちはペコペコ謝る。
「すいませんっ、本当にごめんなさいっ。」
「ごめんなさい。」
「アンタらは悪くねぇから謝んな。
ただ、コイツらとは別れた方がいいかもな。」
「大丈夫だから、ね??
俺たちもう行くからさ、ほら、清四郎っ行くよ。
二人は気にしなくていいからね(笑)」
秀はそう言って俺の腕をグイグイと無理やり引っ張っていく。
「清四郎ってば、キレるとたまにヤクザっぽい口調になるよね(笑)」
「あ??」
「ほら。」
「………。」
意識はしていない。
つまり素で出てくるということだ。
まぁ、原因として思い当たる節はいくつかあるが、あえてそこには触れないでおこう。
「ありがと。」
「??」
「俺の分も怒ってくれてありがと。」
「……。」
「ありがとーっ。」
「おお。」
その時、自分が大人気もなく年下の高校生相手にキレたことを後悔した。
でも、そんな俺とは対照的に秀は晴々とした顔をしていた。
さっき子供のようにはしゃいでいた秀は、一変して大人だった。
その代わりに35にもなってこんなところでキレる俺はまだガキだった。
「秀。」
「ん??」
人気のない建物の影に入って秀を後ろから抱き締める。
「何??」と少し慌てる秀の首筋に顔を埋めてゆっくりと息を吸えば、秀の優しい匂いで胸が満たされ、刺々しいものがスーっと消えていく気がした。
俺のやりたいことを理解したのか、俺のしたいようにさせてくれる。
ちょっとだけ、充電。
「なぁ………腹減ってイライラする………。」
「あ、ご飯食べるの忘れてたね(笑)」
「肉。」
「チキン売ってたよね??」
「肉。」
「行こうっ!!!」
「ん。
でも…もう少しだけ。」
「うん、いいよ。」
秀は身を捩って俺と向き合うと、ムギューっと正面から抱き締めてくれた。
そして、背中に回した手がなんとか届くうなじを往復して「ヨシヨシ」なんて言ってくる。
秀の癖に………(笑)
ばーか。
キレてごめんな。
「さんきゅ。」
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