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第一部 リラ編:序章『First prologue ~1st プロローグ~』【side エヒト】…(前半)
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ここは、“悪魔の棲む街”と呼ばれている。
今から約百年前、
街に住む10歳~15歳の少年たちが、外れの森で次々と神隠しに遭ったという伝承が、今でも代々語り継がれているからだ。
現存するその森は畏怖の象徴とされ、近付こうとする人間は誰もいない。
でも……――
「それでも行かなきゃならねーんだよ、俺は…!」
自分を奮い立たせて。
見えない敵に牙を剥いて。
一歩、一歩と踏み込んでいく。
そうだ。俺は決めたんだ。
ここに来た以上は、今ここに居る以上は。
自分に課せられた使命を必ず成し遂げるんだと。
◆◇◆◇◆
「………」
ここが、街の奴らが言うところの、“悪魔の棲家”。
神隠しが流行っていたのなんて100年も前だというのに、あるのかないのかわからないような伝承を恐れて、誰も寄り付かなくなってしまったという、あわれな森…。
「…なんだよ、綺麗な所じゃん」
軽く苦笑し、誰にともなく呟く。
父親の転勤でこの街に引っ越して来たのは、まだ小学生の頃だった。
俺も引っ越して早々に“悪魔の棲家”の話を教え込まれ、決して近付いてはいけないと散々釘を刺されたものだから、この場所に足を踏み入れる日が来るとは考えたこともなかった。
「まあ、興味はあったけどさ。
行くなって言われたら行きたくなるのが人間ってもんだよな」
誰も居ないのをいいことに、大声で独り言を言いながらそこらをうろつき回る。
…特に変わったところはない。
「う~ん…
せっかくここまで来たけど、今日のところは収穫ナシって感じだな。
ま、これで俺が悪魔に捕まって“眠り姫”になっちまったら元も子もない。
ここに何の手がかりもなさそうなら、さっさと退散しますかね~」
踵を返して、“悪魔の棲家”から離脱しようとした。
――その時。
「誰か居るんですか?」
「…えっ?」
……
…!!
秋の日の夕暮れ時。
オレンジ色の夕焼けが役目を終えて立ち去った後の森は、《悪魔の棲家》と呼ばれることを喜んでいるかのように、
――一面があまりにも美しい、幻想的な《紫色》に染まっていた。
あいつと出会ったこの日、この時、この場所のことを、俺は一生忘れられないだろう。
「………」
その姿を見て、俺は呆気にとられたようにその場に立ち尽くしてしまった。
「…あ、あの……?」
それは、買い物袋をやたらと沢山抱えたその少年が、夕暮れの森の美しさに劣らないほどの美貌だったからでも、その瞳が初めて見るような透き通った紫色だったからでも、誰も居るはずのない場所に自分以外の人間が居たことに驚いたからでもなくて……
「ロート……?」
「…え?」
「………
…!
あ、いや、ごめん、何でもねーんだ!」
「?
は、はぁ……」
(…何を言ってるんだ俺は?
あいつは今22歳で、年齢が全然違うだろうが。
瞳の色だって違うし、そもそもあいつがここに居るわけないっつーの!)
「悪ぃな。知ってる奴に激似だったもんだから、ついポロッと」
「そう、なんですか?」
……そう。
初めて出会ったその少年の姿に、あまりによく似ている奴を知っているからだった。
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