アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第二部 トラム編:2章『ベヴァイス~証拠~』【side リラ】…(4)
-
◆◇◆◇◆
「……」
トラムの話を黙って聞いていた僕は、聞くこと全てにただただ驚くことしかできなかった。
「結局、後になってわかったのは、一目惚れだったのは母さんの方だけだったってこと。本当は父さんの趣向は変わってなくて、本気で女を好きになることなんてなかったんだ。あの人が母さんと結婚したのは、………ただ、ハーフデビルの子どもに興味があったから」
「…っ!」
僕はついに声にならない声を上げてトラムを仰ぎ見た。
次に続く言葉を考えたら、とても冷静ではいられなくて……――
「それだけのためにぼくが生まれたんだよ。笑っちゃうでしょ」
「そんな……」
なのにトラムは、普段の幼い言動からは想像もつかないほどに落ち着き払っていて、それどころか……その表情には、聞いているだけの僕のことを気遣うような色さえ見えていた。
「でも、どうやらぼくが自分好みのタイプに育たないとわかったみたいで、いらなくなっちゃったんだよね、ぼくも、母さんも、この世界も」
「………え、ちょっと待って! じゃあ…!」
「……」
「じゃあ、もしトラムが、好みのタイプに育っていたとしたら……お父さんは、トラムに……!?」
半ば取り乱した僕に対して、トラムは一瞬きょとんとした顔をしながら、すぐに合点がいったような様子で軽く笑いながら肩を竦めて見せた。
「あ~、大丈夫。もっと小さい頃から、ぼくも心のどこかで反発していて、そうならないように意識してたっていうか」
「………」
「“コレクション”見たって言ったでしょ? 写真の男の子たちの雰囲気がみんななんとなく統一されてたから…」
必死に明るい調子で話し始めたトラムも、今度は明らかに苛立ちを表に出して、ここには居ない相手へ、僕にはきっと理解できない複雑な感情をぶつけていた。
「…なんか、気に入らなくて。これがあの人の求めてるものなら、こういう見た目にならないように育ってやる!って……。なんでだかよくわからないけど、そう思ってやってきたから。だからあの人の思惑が叶うことなんてなかったんだよ。ぼくの身に危険が及ぶようなことなんてね」
「……」
「…その結果、捨てられたワケだけど」
「………」
なぜ、こんなに普通のことのように話せるのだろう?
言葉もなくその顔を見つめながら、僕はトラムのことをどれだけ理解してあげられるのだろうと、それが少しでも多ければいいのにと、本当に、心の底から思っていた。
「……リラ、あのね」
「…ん?」
するとそこから、トラムの話し方がまた少し変わってきた。
「…ここからが……きみに、ちゃんと話さないといけないことなんだけど……」
「…? うん。なあに?」
「……あの、ね……あの…………」
……少しではない。
珍しく、トラムが口ごもっている。
つむじが見えるぐらい下を向いちゃったから表情はわからないけれど、よく見ると小刻みに震えているのがわかった。
まだ知り合ってそんなに長くは経っていないけれど…こんな状態のトラムを見たのは初めてだった。
今話してくれたことは、僕からみれば十分に壮絶で辛い話だった。
それをこんなに冷静に、微笑みまで浮かべながら話してくれたのに、…話が自分のことから僕のことになった途端、先ほどまでとは比べようもないほど、明らかに辛そうな様子に変わったのだ……。
「………」
だから。
「………」
だから、僕は………
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
24 / 31