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それぞれの思惑
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キーンコーンカーンカーン
最後のテストが終わった。
俺は、このテスト中ほとんど眠ることなく、勉強をしていた。
目は充血してくまがくっきりとある顔は、疲れ切っていてやつれている。
それなのに、全くできなかった。
今まで考えたこともなかった0点さえ取ってしまいそうで絶望的だ。
問題の意味すらよく分からないものもあった。
クラスの奴らが背伸びをして疲れたー、と言いながらこの後どこか遊びにいこうと誘ってくる。
しかし、俺はとてもそんな気分にはなれず体調が悪いからと断ってしまった。
割とクラスの奴らみんなと仲が良かったせいか、そんな誘いが何件もあり、みんなの達成感に満ちたキラキラの笑顔を見る度に俺はどんどん心が暗くなっていく。
それはもう自分でコントロール出来るものではなく、周りにも心配をかけているのが分かってはいたがもう取り繕う元気もなかった。
「黒瀬、今日一緒にゲーセン行かね?」
宮森がこちらへやってくる。
「いや、俺はちょっと……」
「えっ、なんか用事あんの?矢野と3人で久しぶりに行こーぜ!なっ矢野も行きたいだろ?」
宮森は前の席で片付けをしている矢野の肩をぽんっと叩いて誘う。
「悪い、俺も今日は帰るわ。」
「えー、なんでだよ?」
「色々やらないといけないことがあるんだよ。お前みたいに暇じゃねーの。」
「つまんねー。」
そう言うと宮森はブツブツ文句を言いながら帰っていく。
「じゃーな、黒瀬。」
矢野もそう言うと、教科書がぱんぱんに詰まったかばんを持って教室を後にした。
教室にはもうほとんど人がおらず、俺も落ち込んでいてもどうにもならないので帰り支度をする。
今回のテストの結果は、4日後に一斉に廊下に貼り出されることになっている。
俺は今はまだ何もない廊下のその部分を見て、心から願う。
神様なんか信じたことはないけど、願う。
どうか、どうか、…奴隷だけはいやだ。
俺はサッカーをしてクラスの奴らとばかな話をして、文句言いながらも勉強して大学へ行って、誰か大切にしたい人をいつか見つけて……。
そんな普通の人生が送りたい。
どうか、どうか神様お願いします。
校門を出たところで風はもう冷たくなってきて、銀杏が黄色へ色づいていたことに気づいた。
こんな何度も巡り合ってきた光景が夢の中にいるようでとても綺麗に見えた。
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