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チャイムと食べかけの食パン
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それから3日間は穏やかに過ぎていった。
学校でも家でも俺は今までと同じように笑って普通に過ごしながら、心の中は真っ暗な夜道を彷徨っているようで、夜ベッドに横になると天井をぼーっと見つめながら答えのでないことを考えていた。
もし、俺が奴隷になったら家族にも、友達にも、見放されてしまうのか?
それが奴隷の役割だったとしても耐えられない…。
俺も新庄先輩みたいになってしまうのか……。
いや、でもまだ奴隷と決まった訳じゃない。
全力は尽くしたし、俺よりも出来てないやつもいるかもしれない。
いつも学年最下位の山下とか、あいつがなるかもしれない。
でも、もし俺が最下位だったら……。
そんな堂々めぐりを繰り返しながら気がつけば朝焼けが窓の外から顔を出す。
そんな日々を過ごして、ついにテスト発表の日がやってきた。
「優人、どうしたの?顔色悪いわよ。」
行きたくなくてたまらないが、学校を休むと母さんが心配するため、何とか心を鬼にして制服に着替え、リビングへ行く。
母さんは朝ごはんをテーブルに並べながら、俺の顔を心配そうに覗いた。
「大丈夫。ちょっと疲れてただけだから。」
「そう?あんまり無理しないでね。…あっそう言えば今日テストの結果出るのよね?」
「あっ、……うん。」
「優人、テスト前すごい勉強してたからお母さんびっくりしちゃった。楽しみにしてるわね。」
「……うん。」
俺は、いすに座り食パンをかじりながら歯切れの悪い相づちを打つ。
「優人、おはよう。」
「おはよう、父さん。」
スーツに着替えた父さんも座り、3人家族の朝の時間が穏やかに過ぎていく。
あまり喋らないが優しい父さんと、少し心配性でけれど滅多に怒ることはなくいつも俺のことを一番に考えてくれる母さん。
その2人と過ごす時間が永遠に続けば良いのに、と思った。
その瞬間、静かでやわらかな空間を、無機質なチャイムの音が切り裂いた。
「あら、こんなに早くに誰かしら。お隣の佐藤さんかしら。」
そう言いながら、母さんは食べかけの食パンを皿において、玄関へと小走りに向かう。
「はーい、今開けますね。」
そして、ガチャッと音を立てて玄関のドアを開ける。
「朝早くにすみません、こちら文部科学省 学校推薦奴隷局の者です。」
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