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一時の温もり
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ふわっとした温もりの中目が覚めると、俺はあの青年の腕の中にいた。
腕の先に見えた窓の外はまだ暗い。
浅い眠りだったのか、意識はすぐにはっきりしたから、さっきからそんなに時間は経っていないのかもしれない。
……どうやら、青年は泣きじゃくって疲れて寝た俺を抱きしめたままベッドに横になったらしい。
一回目に起きたときとは違う、ホットミルクを飲んだときのような体中に染みこんでくる優しい温かさ。
男達に無理やり色々とやらされていたときの凍りつくような恐怖とは違い、何だか心地よい。
俺は青年の袖をきゅっと掴むと自らさらに青年の胸の中へ潜り、足を丸めた。
その時
「……ん?……冷てえな。」
「あっ……えっと…おはよう。」
俺の足が青年の膝上あたりに当たってしまい、青年を起こしてしまった。
まだポワンとした顔で俺の方を青年は見た。
「寒かった?」
俺の足の冷たさを心配してか、青年が声をかける。
「うーん、ちょっとだけ。でも、うん、暖かったよ。」
「何だ、それ。ほら。」
青年はふっと笑うと俺を強くぎゅっと抱きしめ、丸まった俺の足に自分の足を絡める。
「これならもっと温かいぜ。」
「………そうだね。」
やばい、照れる。
なんだこのナチュラルイケメン。
俺は恥ずかしくなって頭を青年の胸にすっぽりとうめる。
そしてもごもごしながら質問する。
「俺まだお前の名前知らないんだけど、何て言うの?」
「ああ、そう言えばそうだな。俺は坂見 楓。お前は?」
「黒瀬優人。優しいに人ってかいて優人。」
「へえー、優人か。どこ高?」
「A高。坂見は?」
「楓でいいよ。みんなそう呼……んでたし。俺はB高だから、結構近いな。」
とっさに呼ぶと言いそうになって、自分が奴隷だということを思い出して過去形にした楓の顔をちらっと覗くと、長めの睫毛のついた垂れ目のなかで黒目が切なげに揺れていた。
「楓って不良?」
「お前見た目で判断してるだろ。」
「いてっ!」
俺は気分を明るくしようとそう質問すると、楓は俺の頭を拳骨でぐりぐりとした。
「いてて!ちょっやめてよ!」
「ふふ。」
「何で笑うんだよ!」
楓が笑った顔を見て、俺もそんなことを言いながら笑ってしまう。
「俺は別に不良じゃねえよ。……ちょっとやんちゃなだけだ。」
「……ちょっとやんちゃな高校生は金髪に刺青しないだろ。」
「お前はなんか……めちゃくちゃ爽やかなスポーツ少年!って感じだな。」
「ハハ、なんだそれ。まあ俺サッカー部だったし、あながち間違ってはないかな。」
「へえ、サッカーやってたんだ。俺は野球派だったなー。」
「それ!ただ金属バッド振り回してるだけじゃなくて?」
「うっせぇ!」
俺たちは一つのベッドの上で、ケラケラ笑いながら何気ないおしゃべりをした。
普通の男子高校生の、修学旅行の夜みたいなそんな気分だった。
出会いは最悪で、お互い出会って間もないのに恥ずかしい所を全部見せ合ったにも関わらず、普通に話せるのがなんかおかしくて、でも心地よかった。
今は自分が奴隷なんて幻だったんじゃないか、と思えてくる。
部屋に時計がなくて何時か分からないけれど、朝がこなければいいと思った。
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