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Side story:新庄 良
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俺が中村に連れられて1年生達の前で……恥ずかしいことをさせられてから1週間位経ったある日の朝。
廊下ではその1年生達が騒いでいた。
「おい、まじかよ!!!!」
「信じらんねぇ!!俺、山下かと思ってた!」
「まさか、黒瀬がな……」
俺はその会話で状況を察した。
そうだ、そういう時期だ。
そう、1年生から新しい学校推薦奴隷が生まれる日。
俺は長い長い悪夢の始まりのような一年前を思い出した。
そうだ、俺は一年前のあの日、中村のことを殺してやりたいほど憎んだんだ。
俺はバスケ部に所属していた。
毎日朝練のために早起きして、昼休みには友達とバスケをして、放課後は先輩に必死に食らいついて走り回っていた。
友達も結構いたと思う。
自分でいうのもおかしいが、周りりからは頼られるタイプで彼女のいたことのない俺に恋愛相談を持ちかけて来る奴もいたし、まだ1年ながら将来は新庄が部長だな!とよく言われたりもした。
けれど俺はそんな頼られる自分というのに、多分疲れていた。
人当たりが良いと言えば聞こえがいいが、悪く言えば確固たる自分の意思というものがなく人に流されやすい性格でもあった。
相談をしてくる奴も、何か答えを求めているのではなくただ話を聞いて欲しいだけのようだったし、部長も都合良く押しつけられているようでどこか居心地の悪さを感じていた。
だからこそ、たまに部活がオフになったときに訪れる図書室は俺の憩いの場だった。
自分が見つけ出した本、自分の頭の中に描かれる景色や人物。
全て誰に邪魔される訳でもなく、本当の自分でいられるその空間が昔から大好きだった。
しかし俺にとって当たり前に両立しているスポーツと読書というのは、周りからすると違和感があるらしく、だんだんと読書の趣味は誰にも教えなくなり元気なスポーツ少年という印象だけを与えるようになっていた。
そんな日々の延長線上で俺は中村と出会ったのだ。
あの日は6月のジメジメした雨降りの日だった。
部活は体育館で工事が入り休みになって、俺はここぞとばかりに放課後ホームルームが終わるとすぐに図書室へと向かった。
「カージャックの冒険書」というシリーズ物にはまっ
ていて、それの第三巻を早く読みたくてたまらなかったのだ。
まだ他のクラスはホームルームをやっていたので、一番乗りで図書室へ着いたと思い、勢いよくドアを開けた。
「ガラッ!」
勢いよくあけたドアが風を起こし、俺の前髪を揺らした。
お洒落を意識して目にかかるくらい長めにしていた前髪がふわっと舞い、視界が開けた瞬間。
一人の青年と目が合った。
そう、それが中村だった。
「そんなに急がなくても本は逃げないよ。」
優しい茶色の髪が、中村の座っている場所へと差し込む光に照らされて、キラキラとした砂浜のようだった。
中村は優しく笑いながら俺に話しかけてきた。
綺麗な顔だな。
俺は同性に初めてこんな感情を抱いた。
……まさかそれが俺の奴隷への第一歩だったなんて、この時は知るはずもない。
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