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夢から覚めた夢
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山口が部屋を出てから、楓が帰ってくるまでの間、俺は気がつくと眠っていた。
サッカーボールを追いかける。
隣には矢野と宮森がいて、後ちょっとでゴールまで辿りつきそうだ。
俺は矢野にパスをした。
そうだ、矢野はロングシュートが得意だった。
矢野がゴールを決めた瞬間、俺たちは肩を組んで喜び合う。
泥まみれになって汚れた靴が誇らしく見えた。
その時、宮森が満面の笑みで何かを言った。
俺は聞き取れなくて、「もう一度言って。」と宮森の方を見た。
すると、そこには誰もいない。
青空の下駆け回っていたグラウンドは、影も見えないほど闇に包まれていて何も見えない。
矢野!!宮森!!!
俺は必死に叫ぶが、返事はない。
切らす息も、速まる鼓動も忘れるほど、暗闇の中を走り回る。
その時、遠くにボーっと光る提灯のような揺らめいた灯りが見えた。
あっ!!!
俺はその方へ向かって走り出す。
けれど灯りは遠ざかっていくばかりで、次第に俺は足を止めた。
灯りの方から声がする。
「ナイス!黒瀬。」「頑張ろうな。」
「じゃーな、黒瀬。」「また明日。」
「優人、お帰り。」「いただきます。」「お休み。」
矢野、宮森、父さん、母さん…………。
行かないで!!行かないで!!!!
俺も連れていって!!!
連れていって…………
「…………と、………うと……優人!」
ハッと目を覚ますと、そこには心配そうに俺をのぞき込む楓の姿があった。
悲しい夢を見ていた気がする。
ぼんやりとしか思い出せない夢の破片は、一粒の涙になっていた。
「大丈夫か?うなされてたけど……。」
「……………大丈夫。」
まだうまく動かない頭で答えながら、起き上がろうとして、両腕が縛られたままであることを思い出した。
「この紐、取ってくんない?」
「ああ。……あの時のままだったのか。」
俺は楓に背中を向けた。
そして、楓が紐を解いてくれている間、眠る前に山口と話したことを徐々に思い出した。
…………。
…………。
山口は俺が楓に恋愛感情を持っているのか、聞いてきた。
そして『お前も』と言った。
楓はお仕置きされた後、花見に大事そうに抱えられていった。
『禁断の恋は、人を狂わせる。』
禁断の恋。身分違いの恋。
「……なぁ。」
「ん?」
一瞬、躊躇った。まさかそんなことあるはずがない。
けれど、もしかしたら。万が一。
楓の表情が見えないことをいいことに俺は、恐らく楓を困らしてしまう質問をした。
「……俺が寝てる間、何されてたの?」
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