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Side story:坂見 楓【2】
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優人からの突然の質問に俺は一瞬言葉を発することが出来なかった。
言えない。
言える訳がない。
花見に今まで何度も抱かれて、今日は自分から求めてしまったこと………。
「っ…あー、……、呼び出されてたんだよ。」
曖昧に、嘘ではない程度にぼかして答える。
俺は、優人を拘束している紐を解こうとするが、焦りからか中々解くことが出来ない。
「…………呼び出されて、どうしたの?」
「何でそんなこと気になるんだよ?」
俺は内心焦りながらも、軽く吹き飛ばすような口調で、笑いながら言う。
結び目を摘まんだ指先が手汗で滑る。
「いや、うん、まぁちょっと。」
優人も歯切れが悪く、気まずい時間が流れた。
…………。…………。
………………………………………………………………。
どのくらい経ったのだろうか。
やっと解き終えた俺は、優人に「取れたぞ。」とだけ言うと、静かに立ち上がって、小窓の方へ歩いて行った。
もう月明かりが景色を支配する時間帯になっていて、さっきまで青々としていた空でさえたった一つの月を輝かせるのに精一杯だ。
どこからかコオロギの唄が微かに聞こえてきて、穏やかな時の流れに全て任してみたくなった。
優人に、自分の想いを聞いて欲しくなった。
なぜか優人はもう全て分かっていて、受け止めてくれるような気がした。
「……………花見に、………抱かれてたんだ。」
俺はあえて優人の方は見ずに、窓の外の遥か遠くを見ながら、一人言のようにそう言った。
別に優人が聞こえないならそれはそれで構わないと思い、小さな小さな声だけで言葉にした。
けれど優人にはちゃんと聞こえていたようで
「…………そうなんだ。」
と驚きと言うよりは、仮説を確かめるように相づちを打ってくれた。
俺はそれに安心感を覚え、また呟く。
「快楽ってさ、怖いよな。………自分が自分でなくなる瞬間にどこか冷静な俺がいるんだ。溺れていく自分を、外から見てる自分がいてさ、…………吐き気がするほど汚えなって思うんだ、自分のこと。」
「楓は汚くなんかない!!絶対にない!!!」
優人の力強い言葉が心にすっと染みていくのが分かった。
そう言って欲しかった自分に気がつく。
「…………でも、俺、優人には言ってないけど、ここに入れられる前、結構悪いこと平気でやってて、だから今の状況もしょうがねぇよなとか本当は思ってるんだよ。」
「…………楓……。」
「けどさ、まだ昨日あったばかりなのにお前といると、普通の高校生になったような気がして、バカみたいに楽しくて……、花見に抱かれると汚え自分が嫌って言うほど出てくるのに、優人と話してると何か、自分の好きなところがいつか見つかるような気がしてさ……その、なんて言うか……」
「「ありがとう」」「な……あっ!」
俺の言葉と優人の言葉が重なった。
俺は優人の方へ振り向いた。
優人は月明かりに佇んで、優しく俺に微笑んだ。
「話してくれてありがとう。……守ってくれてありがとう。楽しい時間をありがとう。これからも仲良くしてな。俺も楓のこと大切に想ってる。大好きだから。楓の良いところ、これからたくさん俺が教えてやる!だから!汚えとかもう言うなよ。」
言葉が連なるにつれて、優人の口調と表情は強く、そして真っ直ぐに変わっていく。
「………ありがとう。」
こんなに幸せな涙を堪えるのは初めてだった。
すると優人はニヤッと笑って
「今度、楓のヤンキーな昔話も聞かしてもらうから。」
と言った。
俺もニヤッと笑って
「ヤンキーじゃねぇよ。やんちゃなだけだって言っただろ!!」
とツッコむ。
「それ絶対勘違いだから。今どきこんな王道ヤンキーいねぇよ。」
「分かってねぇな。ヤンキーはバイクに乗って倉庫裏で砂嵐巻き起こしながら殴り合いで友情深めて、たまに河原の捨て犬を助けたりすんだぞ。めちゃくちゃ格好いいんだよ!!俺はチャリ乗りまわして、コンビニの駐車場でカップラーメン食ったりしてただけだ、まだまだヤンキーにはほど遠いぜ。」
「お前のヤンキーのイメージ、ドラマの見過ぎだから。……世間的にはお前も立派なヤンキー。楓、面白すぎ。」
優人は腹を抱えてケラケラ笑っていた。
俺はその優人にばっと飛びつくと、そのまま二人してベッドに勢いよく横になる。
顔を見合わせて、また笑った。
笑い疲れて優人が眠ると、俺もその寝顔を見ながら眠りについた。
早く夢から覚めて優人と、こうしてグダグダ喋りたい。
そんな夢を見た。
こんな感情は初めてだった。
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