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いい人間
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そういえば人間の間では、魔法使いと言葉を交わすと魂を抜かれるという言い伝えがあると聞いたことがある。
魔法使いにそんな力があるわけないのに。例えあったとしても出来損ないの俺じゃ、抜かれるのはせいぜい喋った分の酸素くらいだ。
でも相手がこっちと喋りたくないのなら仕方がない。
腰に巻いたベルトの袋から治癒薬が入った瓶を取り出して人間に向かってコロコロと転がした。
怪我をした動物を見つけた時用に持っていたものだ。
人間はその瓶を拾うと俺の方向に視線を向けた。もしかするともう暗くてあまり見えてないのかもしれない。
「それ、怪我してるとこに塗ったら、治る······と思う」
人間に使ったことはないから絶対とは言いきれないけど。
最近は、薬草を調合し魔法をかけて作る薬にハマっていて色んな種類を作れるようになった。
直接治癒魔法をかけてもいいんだけど、さすがにそこまで
至近距離にいくのは、ちょっと怖い。
人間の行動をじっと見守っていると、人間は少し考えるような顔をして顔を上げると、瓶を顔の高さまで上げて「ありがと」と笑ってみせた。
初めてお礼を言われた事に少し嬉しくなって、ついでに何個か治癒薬をプレゼントしておいた。
人間が治癒薬を使って足を治し、人里に降りていくとこを見届けて家に帰る。
人生初めての「ありがとう」をまさか人間から言われるとは。
きっとあれはいい人間だ。
「明日も会えるかな」
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